第 7 部  山 地 発 メ ッ セ ー ジ (5)
2002.11.2
中国山地
中央対地方  分散社会の意義 理解を 

 これまで何となく受け入れてきた中央と地方、あるいは国・県・市町村を上下関係としてみる意識から、そろそろ脱皮すべきときではないか、と思う。

 広島県西城町三坂地区で、「ひばごん丼」で知られる女性グループの食堂を取材していた際、地元の三坂小が話題に上った。生徒十二人の複式三学級。食堂で毎年開く卒業生のお別れ会が、六年生が不在のため来年は開けないという。

「江の川沿いの集落」平地が少なく河川敷の畑に並行した国道上の高台に分散している(島根県桜江町大貫)

 いずれ中心部の学校に統合の流れらしい。だが、皆には「ここの校舎は立派なんじゃけ、こっちに統合すりゃあええのにね」という思いがのぞいていた。

 同じ話を、統合を拒否して小学校を残した広島県大朝町大塚地区では、もっと明確な形で聞いた。なんでも中央に集まるのが当然という意識が、田舎の中でも中央・地方意識を生んでいる。「それがおかしい」と住民が気づいたのだ。

 「合併で辺地」

 そのおかしな構図を、さらに進めかねないのが、国が旗を振る平成の市町村大合併ではないか。「合併でうちは辺地になる」という声は随分とある。

 ただ「財政的にはもう単独ではやっていけない」という市町村長は多い。求められるのは、合併で役場から遠くなる地域を行政過疎にしない仕組みづくり。アイデアとしてほぼ見えてきたのが、一定の地区単位に新たな自治組織を設ける方向だろう。

 それを「もう一つの役場」と表現するのが、特定非営利活動法人(NPO法人)ひろしまNPOセンターの代表理事、安藤周治さん(54)。広島県作木村に住み、「過疎を逆手にとる会」の元会長である。

 試される自治

 自治組織は役場や農協、森林組合が進めて来た事業を地域経営の視点で担う。そのためにはNPOや会社、協同組合など法人化が必要。だから住民の自己決定、自己責任という自治能力が試される…。

 まさに自治体の逆境を逆手にとって、「そのとき日本に初めて本当の民主主義が生まれる」と希望を持ってとらえる。

 私たちは連載を通して農村の持つさまざまな魅力と可能性を紹介してきた。食料生産の場であり、自然環境を維持する場。何よりもそこで人々が暮らしている場であることを、あらためて重視したい。

 小泉改革に象徴される行財政改革の加速が、その先行きを不透明にしている。高速道路計画の見直し、地方交付税の削減、公共事業の都市と農村の配分の再検討…。

 大きな対立軸

 広島県布野村の梶川孝司村長は、政治も経済も今の大きな対立軸は、自民と民主ではなく都市と農村、中央と地方とみる。勝負は農村が押されている。

 なぜか。「政治家は多数に弱い。政治は数です」。今後、定数是正が進めば農村地域の議員は減る。過疎地はますます、都市の利益に押されてしまうという。

 だが、大都市圏だけではなく、数多い地方での生活の場を支えていく分散型の社会こそ、日本社会の将来を豊かにする道ではないか。山地での多様な暮らしぶり自体が、そのメッセージを発している。

 新しい農業基本法と林業基本法が掲げる農村、森林が持つ多面的機能は、住民の自治能力だけでは維持できない。適切な財政措置はこれからも不可欠だ。

 そう主張する権利が中国山地にはある。むしろ山地に暮らす者の責務と考えてはどうだろうか。


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