中国新聞

 
2001参院選びんご

 5.農業の行方

生命支える農村守ろう / 進む高齢化 再生が急務

広島県立大教授
 持田紀治さん(60)
 
若手農業者
田辺真三さん(30)
農業経営学。棚田ネットワーク中国代表   神石町で野菜などを有機栽培。福山市へ届ける

■耕作放棄

 ―一連の改革論議では農業が対象に含まれていない感がありま す。

 田辺 備後の農村は高齢化が進み、耕地の維持が難しくなってき た。私の集落(二十八戸)では、この数年で農業の担い手五人が亡 くなり、うち三人は後継者がいない。田は三年間放っておくと直径 五センチほどの木が生え、復活には大変な労力がいる。農業を改革 の中に位置付け、再生を図るべきだ。

 持田 広島県の耕地は昨年までの十年間で15%(約一万一千ヘク タール)減り、耕作放棄地は約五千六百ヘクタール。危機的状況 だ。農業について小泉内閣の「骨太の方針」は「意欲と能力のある 経営体」に施策を集中する方向を打ち出している。大規模専業化を 狙っているが、具体策が見えない。

■大規模化

 ―広島県は山間地が多く、一戸当たりの経営面積は〇・七四ヘク タール(全国三十九位)と大規模化にはほど遠い現状です。

 田辺 うちの場合、経営安定のためこの七年で四倍の三・五ヘク タールに拡大したが、水田を借りるのは結局、亡き父の信用が頼り だった。新規就農者を受け入れるためにも農地を集約するシステム が必要だ。かといって兼業農家の切り捨てにつながるような選別は 反対。水一つとっても、農村のみんなが何キロにも及ぶ用水路の掃 除をするから確保できている。担い手が増えないうちに兼業農家が 農地から手を引いたら専業もやっていけない。

 持田 確かに中核農家に農地が集まらない現実がある。土地の値 上がりはもう期待できない。所有者は、食糧生産に活用するという 原点に立ち返ってほしい。昨年秋、福山市民(非農家)にアンケー トをしたら、68%が農地の減少を心配していた。農業立て直しは都 市住民も関心を寄せる国民的課題。この際、失業者を農業に誘導 し、農地の確保まで面倒をみるなどの総合的な対策が必要だ。

■自給率

 ―食糧自給率は下がり続け一九九九年は40%。各政党は自給率の 向上を公約しています。

 田辺 担い手不足と農地の荒廃が進む現状では難しい。国内農業 は、飛行機で種をまくような米国や、人件費が安い中国には価格面 で太刀打ちできない。自給率向上は農産物の価格上昇に直結する。 政治家はそれを消費者に説明すべきだし、農家は安全や安心といっ た付加価値を売る工夫が必要だ。無農薬有機栽培米は二倍程度の値 で売れている現実がある。

 持田 輸入農産物は、いつ撤退するか分からない安売りスーパー のようなもの。頼り切っていると突如、輸入がストップして痛い目 に遭いかねない。その点、農村は地元の商店街のような性格があ る。多少値段は高くても、祭りや地域づくりを担い、間違いのない 産物を提供する。「改革」の「痛み」が議論されているが、生活の 基本は命を支える食。農業、農村の視点を忘れてはいけない。

(おわり)

(01.07.19)


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