■「IT」合唱 資格取れども厳しい再就職 

  ●職業訓練で光通信技術 中高年層の受け皿不足

 「IT、ITと言っても、僕らの年代では実務経験がないとなか なか求人がない」。広島市安佐南区の中野定信さん(44)はため息を ついた。

 昨年十月、力仕事の倉庫業務に就いていた建設資材リース会社を 辞めた。腕に痛みが走り、思うように動けない。三人の子供の末っ 子は小学一年。「まだ先は長い。体を治すことが先決だ」と転職を 決意した。

 ▼若年層が有利

 森喜朗内閣時代にスタートした各種のIT(情報技術)事業。中 野さんは厚生労働省の外郭団体、雇用・能力開発機構のポリテクセ ンター広島(中区)に今年一月、新設された光通信施行技術科の一 期生である。

 光ファイバー接続やパソコンの通信工事を学んぶ傍ら、独学で建 設機械の運転など十以上の資格も取った。研修は六月末で終った。 「どんな仕事でもITの知識は役に立つ」と粘り強く企業を回るも のの今、再就職の厳しさを実感している。

 光通信施行技術科の一期生は十六人。二十代が十二人、三十代が 三人で、四十代は中野さんだけ。通信設備工事業などに就職が決ま った九人も、八人が二十代である。

 センターには二、三十代の姿が目立つ。昨年度の訓練生五百三十 五人のうち、四十五歳以上の中高年は三五%。「適正検査で、どう しても若い人が成績の上位を占める。ここ数年で年齢構成が逆転し てしまった」と竹井三士所長(55)。七月の入所競争率は三・五倍。 多くの中高年が入所を断念せざるを得ない状況だ。

 「聖域なき構造改革」の痛みとして想定される大量の失業者。そ のセーフティーネットとして、職業訓練に加えて雇用を吸収するI T企業の育成が課題だ。西区の小松誠さん(36)は、その難しさも体 験した。

 六年前からソフトウエアやインターネットシステムの企画開発を 手掛けてきたが、二代目社長を任された前の会社では資金繰りが悪 化し行き詰まった。「開発に気が取られ、経営が中途半端になっ た」と言う。

 ▼横の連携希薄

 挫折と周囲の励ましで、出資者を得て九九年に新会社を設立。次 世代のコンピューター言語XMLを使った研究テーマが評価され、 広島県内で初めて経済産業省の外郭団体の「未踏ソフトウエア創造 事業」の開発費千五百万円を支給される。

 その体験から「広島のIT従事者は横のつながりが希薄で、東京 の大手の下請けに甘んじている。技術力を結集してユーザーにアピ ールしないと、地方は生き残れない」と強調する。

 ベンチャー企業の中でもIT関連はまだ少ない。広島銀行系の、 ひろぎんキャピタル(中区)が過去六年間に投資した四十六社のう ち、IT関連は四社。兼重政顕社長(59)は「試行錯誤しているのが 現状。まだ中高年に開かれた雇用の場ではない。成熟した受け皿と なるには相当時間がかかる」と指摘している。

「改革選挙」と地方

2001/7/24

ポリテクセンター広島で光ファイバー接続を実習する 訓練生たち