■高齢化 見通せぬ将来像
整然とほ場整備された水田が、盆地に広がる山口県阿東町徳佐地
区。緑色濃く育つコシヒカリを見やりながらも、農業板垣靖彦さん
(63)の表情は、さえない。「米づくりで経営が成り立つ農業に何と
かしたいんだが」
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整然と水田を見ながら「農村として生き残りたい」と話す板垣さん(阿東町)
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中山間地域の農業と、農地保全などのため国は昨年度から、直接
支払い制度を始めた。五年間、農地を荒らさぬ条件で交付金を支払
う。「農山村が生き残るための、最後の切り札」(県農村振興課)
となる新制度で、徳佐地区は県内最大の集落協定を実現させた。
十六の集落(三百二十五戸)が、四百五十ヘクタールで集落営農
を目指し、共同で農道や水路の維持管理をする。国などの交付金は
年間約四千百万円。個人、集落への配分を除く二割を共同事業に使
う。
その、比較的条件に恵まれた県内有数の米どころでさえ、地域の
将来像は見通せない。担い手は七十歳代が中心。米価は市場開放の
ため半値近くに落ち込み、減反で農地は削られる…。
七月十日、集落の代表が集まった協定の運営協議会。オペレータ
ー三十人養成などの計画を決めた。協議会会長でもある板垣さんは
「田舎に力は残っていない。協定で地域づくりができるかどうか
は、すべてこれから」と話す。
協定面積が県内最大の阿東町。農家は現在、千五百四十九戸。十
年間で三百五十六戸減った。集落協定は「集落衰退の中、助け合い
で地域づくりを進めたい」と、町が先頭に立ち推進。対象集落の九
割を超える百二十三集落が締結した。
むつみ、福栄両村と境を接する野地地区。山深い斜面に七戸が張
り付く。戦後百人以上だった人口が、今は十一人。平均年齢は七十
五歳を超える。田にはイノシシよけの柵(さく)。草刈り代の足し
にでもと、協定を結んだ。
「地区では葬式の始末もつかん。何年か先にはここも立ち行かん
ようになるだろうが、今は考えがおよばん」。淡々と、世話役の金
子輝男さん(78)がつぶやく。
町内には、未締結十三集落が残る。説得に歩いた町産業振興課の
尾崎一郎さん(29)は「リーダーの不在、五年間も農地は守れないな
どの不安が多かった」と振り返る。県内の未締結集落約九百カ所に
理由を聞いた県の調査でも「高齢化が進み農地保全が図れない」
が、33%で最多を占めた。
協定締結が、改めて浮き彫りにした農村の疲弊。首相が掲げる構
造改革は、「均衡ある発展」から「地方の自立」への転換、市場原
理導入を色濃くにじませる。
集落営農による生き残りを模索し始めた、板垣さん。「社会構造
の中に、健全な田舎をきちんと位置付ける政治のリーダーがいてほ
しい」と願う。
(01.07.20)