中国新聞

 
  構造改革の中で 参院選山口2001

4.中山間地域
 農村の疲弊 浮き彫り


■高齢化 見通せぬ将来像

 整然とほ場整備された水田が、盆地に広がる山口県阿東町徳佐地 区。緑色濃く育つコシヒカリを見やりながらも、農業板垣靖彦さん (63)の表情は、さえない。「米づくりで経営が成り立つ農業に何と かしたいんだが」

整然と水田を見ながら「農村として生き残りたい」と話す板垣さん(阿東町)

 中山間地域の農業と、農地保全などのため国は昨年度から、直接 支払い制度を始めた。五年間、農地を荒らさぬ条件で交付金を支払 う。「農山村が生き残るための、最後の切り札」(県農村振興課) となる新制度で、徳佐地区は県内最大の集落協定を実現させた。

 十六の集落(三百二十五戸)が、四百五十ヘクタールで集落営農 を目指し、共同で農道や水路の維持管理をする。国などの交付金は 年間約四千百万円。個人、集落への配分を除く二割を共同事業に使 う。

 その、比較的条件に恵まれた県内有数の米どころでさえ、地域の 将来像は見通せない。担い手は七十歳代が中心。米価は市場開放の ため半値近くに落ち込み、減反で農地は削られる…。

 七月十日、集落の代表が集まった協定の運営協議会。オペレータ ー三十人養成などの計画を決めた。協議会会長でもある板垣さんは 「田舎に力は残っていない。協定で地域づくりができるかどうか は、すべてこれから」と話す。

 協定面積が県内最大の阿東町。農家は現在、千五百四十九戸。十 年間で三百五十六戸減った。集落協定は「集落衰退の中、助け合い で地域づくりを進めたい」と、町が先頭に立ち推進。対象集落の九 割を超える百二十三集落が締結した。

 むつみ、福栄両村と境を接する野地地区。山深い斜面に七戸が張 り付く。戦後百人以上だった人口が、今は十一人。平均年齢は七十 五歳を超える。田にはイノシシよけの柵(さく)。草刈り代の足し にでもと、協定を結んだ。

 「地区では葬式の始末もつかん。何年か先にはここも立ち行かん ようになるだろうが、今は考えがおよばん」。淡々と、世話役の金 子輝男さん(78)がつぶやく。

 町内には、未締結十三集落が残る。説得に歩いた町産業振興課の 尾崎一郎さん(29)は「リーダーの不在、五年間も農地は守れないな どの不安が多かった」と振り返る。県内の未締結集落約九百カ所に 理由を聞いた県の調査でも「高齢化が進み農地保全が図れない」 が、33%で最多を占めた。

 協定締結が、改めて浮き彫りにした農村の疲弊。首相が掲げる構 造改革は、「均衡ある発展」から「地方の自立」への転換、市場原 理導入を色濃くにじませる。

 集落営農による生き残りを模索し始めた、板垣さん。「社会構造 の中に、健全な田舎をきちんと位置付ける政治のリーダーがいてほ しい」と願う。

(01.07.20)




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