中国新聞



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施設の一部 情緒障害児向けに
2.心の傷 治療機能強化



 虐待を受けた子どものケアのため、児童養護施設が治療機能の強 化を目指すなか、鳥取子ども学園(鳥取市)は、全国に先駆けた取 り組みをしている。施設の一部を常勤の精神科医や看護婦、心理セ ラピストを置く情緒障害児短期治療施設(情短施設)に切り替える 方法だ。

熱意で結ばれた川口医師(左)と藤野園長

 藤野興一園長は「被虐待児のなかには、自らの自然治癒力では心 の傷を乗り越えられないため、治療を必要とするケースが少数だが いる」と治療機能アップの必要性を訴える。

 子ども学園では一九九四年、児童養護施設の定員を八十人から四 十五人に減員。代わりに入所者三十人、通所者十五人の情短施設 「希望館」を設けた。園舎で暮らす子どもの数は養護施設と情短施 設を合わせて七十五人。班編成や食事、遊びなどの日常生活はすべ て一緒にする。藤野園長は「子ども本人には、どちらの施設に入っ ているのかほぼ分からない」と話す。

 ただ、情短施設の子どもは定期的に医師の診察や、セラピスト二 人の面接を受ける。親には週一回の面接を原則的に義務づけるなど 家族の再構築を目指す、ファミリーケースワークにも力を入れる。

 近くの国立療養所を辞め、希望館の常勤医師を引き受けた川口孝 一さん(41)は「虐待を受けた子どもへの対応は診察室だけで片付く 問題ではない。親子関係の傷つきを修正し、過去と折り合いをつけ ていければ、子どもたちが親になった時に暴力を次の世代に伝達し ないですむ」と話す。

 情短施設を設置した七年前、虐待問題はまだ取り沙汰(ざた)さ れていなかったが、児童養護施設はどこも「不登校児の受け皿」に なっていた。学習障害や強迫神経症、拒食症などの問題を抱えた子 どもも多く、園児の約四割が精神科医にかかっていた。

 専門的な治療の必要性を痛感した藤野園長は、川口さんの協力を 取りつけられたこともあって、情短施設の併設に踏み切った。当 時、既に病院や学校の寄宿舎がセットになった例はあった。しか し、児童養護施設という「生活の場」を兼ね備え、子どもたちがと もに暮らす情短施設は全国でも初の試みで、「鳥取子ども学園方 式」と呼ばれている。

 全国五百六十二カ所の児童養護施設のうち、情短施設を併設して いるのは、子ども学園を合わせてまだ三施設だが、近年は被虐待児 の受け皿として新たな注目を浴びている。また、厚生労働省も他の 施設にこういうスタイルへの切り替えを勧めている。

  ■職員数増やせる利点も

 情短施設のメリットは、治療機能のアップだけではなく、職員が 増やせる点にもある。児童養護施設の運営費は、職員の人件費など に充てられる国からの措置費と支援者からの寄付で大半が賄われて いる。情短施設を導入すると措置費が増額される。子ども学園では 職員が二十六人から四十四人になった。

 被虐待児が次々と押し寄せ、「野戦病院」と例えるほど厳しい現 場。職員は一人でも欲しい。「現行制度のなかで対応をするには情 短施設への切り替えしかない」と藤野園長。「施設側も体験に裏打 ちされた、従来の職人芸的対応に加え、治療的な処遇にチームワー クで当たるシステムを確立することが求められている」と変革を呼 び掛ける。

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