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■地域のつながり再構築 「親子分離から施設入所という最終手段の中で、できることって 限られています。やはり、予防が第一ですよね」。子供の家三美園 (尾道市)の保育士山崎美恵子さんは、虐待のつめ跡に苦しむ子ど もたちと、たくさん出会ってきた。 攻撃性を自制しきれないため、けんかをして解雇された卒園生も いる。「社会に出てからも困っている。虐待は一生を台無しにして しまう」
児童養護施設に来るような事態に陥る前に、虐待をなんとか防ぎ たい―。山崎さんは「地域の中に施設があることさえ知らない人が 多い。まず、現状を知ってもらおう」と決意。尾道市社会福祉協議 会と連携して、尾道地区子ども虐待防止ネットワーク会議を昨年、 立ち上げた。 会議のメンバーは、医師や民生委員、保健婦、幼稚園教諭、保育 士。三美園に事務局が置かれている。園児を周囲の偏見から守る観 点から、閉鎖的な児童養護施設は少なくない。施設が虐待防止に向 けた地域の取り組みで中核を担うケースは珍しい。特に、社協との 連携は県内初の試みだ。 会議はこれまでに、虐待防止を呼びかけるパンフレットを、小学 生以下の子どもを持つ保護者、小学生、中学生のそれぞれに向け、 一万部ずつ作製。市内全域に配布した。費用約百八十万円は、社会 福祉医療事業団の助成金を利用した。 また、育児に悩む親の相談を受けたり、虐待を発見、対応したり する可能性の高い教育現場に参加を呼びかけ、毎月一回のペースで 虐待の勉強会も開いている。毎回、幼稚園や保育所の関係者四、五 十人が参加。山崎さんは「忙し過ぎるためか、小、中学校の先生の 反応が薄い。今後の課題です」と言う。 山崎さんたちは、「CAP(子どもへの暴力防止)プログラム」 を、活動に積極的に取り入れている。暴力やいじめ、性被害を受け そうになったとき、子ども自らが、勇気と声を出して助けを求め、 身を守る方法を覚えるプログラムだ。 「『子どもには安心、自信、自由を持つ権利がある』というの が、CAPの根本的な考え方。これを学ぶことで、大人側も子ども とのかかわり方が見えてくる」と山崎さん。会議では講演と寸劇、 実習で内容を学ぶワークショップの「出前」もする。 今年は既に小学校二校、幼稚園、保育所それぞれ一校で児童や保 護者向けのワークショップを開いた。派遣する講師は福山、広島両 地区のCAPに取り組む民間団体から招いている。将来的には講師 の養成も行う方針だ。 会議の仕掛け人の一人である市社協の社会福祉士松井裕子さんは 「民生委員からは、高齢者世帯に入っていくノウハウはあるが、子 どものいる世帯へのかかわり方が分からない、という声をよく耳に する」と指摘する。これでは、虐待を児童相談所へ通報することは おろか、地域の人が育児に悩む母親の悩みを聞いてあげることさえ 難しい。 勉強会やCAPの講師派遣は、こうした、住民や世代の間の壁を 取り払う第一歩だ。「昔は、学校や子ども会などの活動を通して地 域がまとまっていた。子どもが地域をつなげる媒介になる社会を取 り戻したい」 児童養護施設は長年、子育ての困難な家庭を支えるノウハウを蓄 積してきた。地域の養育機能を高めるための「頼もしい社会資源」 (松井さん)として、役割は今後さらに重くなりそうだ。 | ||||
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