中国新聞



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一対一でしか心開かないのに
5.職員数 実態とかけ離れ



  ■配置の基準 見直し急務

 小学生が寝静まった午後九時。防府海北園(防府市)の主任保育 士森本玲子さんも正午からの勤務が終わる。しかし、現実はここか らが本番。中学、高校生の相手がゆっくりできる貴重な時間だ。

食事時、園児に声をかける岩城園長

 子どもたちは、親から満足に愛情を受けられなかったかつての時 間を取り戻すように「自分一人だけをみて」とせがむ。ときには、 暴力や問題行動という裏腹な形で。「とても、勤務中には応じきれ ない」という。

 「気になる子」には、休日をつぶして付き合う。「一対一になっ て初めて心を開いてくれる」からだ。

 児童養護施設の人件費は国からの措置費で賄われている。算出基 準は「児童六人に対して、直接かかわる職員が一人(六対一)」と 決められ、これを「最低基準」と呼ぶ。六歳未満の園児がいる場合 は「加算分」の増員が認められる。

 しかし、子どもの世話は二十四時間体制。職員が八時間勤務で休 日も取れば、実質は一人で二十数人の子どもを抱えている計算にな る。

 園児五十七人の海北園では経費節減などの「自助努力」で非常勤 職員四人を雇っている。それでも直接子どもにかかわる職員は総勢 十八人。園児が学校から帰ってきて寝るまでの最も手厚い人員配置 の時間帯ですら男子、女子、幼児の三班に二人ずつがやっとという のが実情だ。

 「むかつく」「きれる」ことの多い園児たちだけに園内外、学校 を問わず問題を起こす。深夜まで対応に追われることもしばしば だ。休日や夜間の呼び出しもある。現在も、勤務時間外の職員が毎 日交代で中学校へ授業参観に通い、園児がおとなしくしているよう 「にらみ」を利かせている。

 さらに、子どもが病気になれば一日中かかりっきりになる。被虐 待児が増え、研修などで心理や医療などの専門知識を学ぶ必要も出 てきた。これらはほとんどが職員の「熱意」や「奉仕精神」に頼っ ているのが現状だ。

 「虐待を受けた子は特に、安心してゆったりと指導するのが一番 大切なんです。思春期の子どもも増えているのでゆとりがもっとほ しい」と森本さんは強く望む。

 森本さんは自らの子育てを終えた復帰組。女性の多い職場のた め、いずれの施設でも結婚後、退園するケースが目立つ。「続けた くても続けられない」。ベテラン職員の戦力不足に悩む声は切実 だ。

 全国児童養護施設協議会(全養協)は長年、最低基準の見直しを 国に求めてきた。しかし、八対一から六対一に改正されたのは一九 七六年。以来二十五年間もほっておかれている。まるで、社会的に 忘れられた存在。多くの園長が「子どもに選挙権がないうえ、親と いう強い味方もいないので票につながらないからだ」と口をそろえ る。

 海北園の園長で、全養協の予算対策部長を務める岩城満さんは 「施設の使命を果たすためには二対一まで最低基準を引き上げた い。ただ、国民に理解を広げていかないと実現は難しい」と話す。

 そのためには、「施設側も国家資格の社会福祉士の配置や、補助 金の適正利用などに努めなければ」と自戒。園では広報誌を使っ て、現状や決算の報告を怠らない。

 若松園(岡山市)の園長で、中国地区全養協の高月和紘会長は 「次の世代が育つのに、最低限必要な支援をしてほしい」と訴え る。親に見捨てられた子どもを、社会がもう一度、見捨ててしまう ようなことが、あってはならない。

(岡田浩一)

=おわり
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