中国新聞

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県の方針 孤立無援
「凍結」迷走

― 中央が先行、情勢急変 ―



 ■「万全の体制」崩壊

中海本庄工区を前に、干拓農業の厳しさを指摘する公共事 業抜本見直し検討会の谷津座長=右手前(11日、島根県八束郡八束町)

 「どれぐらいの期間の干拓延期(凍結)なのか」(谷洋一農相)

 「期限はないが、農業の担い手の見通しがついた段階で…」(澄 田信義・島根県知事)

 「こういう事業はやるか、やらないか。今の政治は選択をはっき りする時代だ」(谷農相)

 九日に農水省を訪れた島根県の澄田知事は、谷農相と会談。国営 中海干拓・本庄工区の事業凍結を要請したが、谷農相の反応は予想 以上に冷たかった。澄田知事は会談を終え、紅潮した顔をこわばら せた。

 十一日には自民党の公共事業抜本見直し検討会の谷津義男座長が 現地視察に訪れ、澄田知事に事実上、中止を迫った。澄田知事は 「将来の干拓の可能性を残したい」と凍結方針を繰り返した。中止 に向けた自民党、農水省の急激な動きのなか、凍結方針は孤立無 援。ほんの一カ月前には、想像できない事態だった。

 七月上旬までは、県の思惑通りだった。営農見通しや財政負担か ら全面干拓が難しいとみた県は、昨年八月から見直し作業を開始。 凍結方針を固め、今年七月中旬に地元の松江市、同県八束郡八束 町、同郡美保関町に打診した。干拓に代わる地域振興策の意見を聞 きながら、九月までに地元市町と合意し、万全の体制で国と協議 を、と踏んでいた。

 「自民党がこんなに急に動くとは」と県幹部がつぶやく。亀井静 香政調会長ら自民党本部が七月末から始めた、公共事業の見直しが 誤算だった。中海干拓は象徴的存在とされた。「地元の思いを国に 伝えたい」と話す澄田知事に、いら立ちと焦りがにじんだ。

 ■地元結束も揺らぐ

 事業中止に向けた流れは、日を追うごとに加速。凍結方針は「先 送り」として非難され、地元の意見を聞く前に、農水省は内部で中 止の意向を固めてしまった。「問答無用の切り捨てだ」と県幹部は 憤った。

 さらに干拓推進だった松江市は、「凍結でも事業再開は半永久的 に無理」と中止に方針転換。八束町、美保関町は全面干拓推進のま ま、中止を想定した振興策をにらみ始めた。地元の足並みはばらば ら。もはや事業凍結を正面から掲げるのは澄田知事だけだった。

 それでも澄田知事には、中止を自ら言い出せない事情がある。一 九九六年に自ら干拓再開を国に要請。簡単には「全面干拓が最善」 との旗は下ろせない。堤防などの既存施設の処理問題や、干拓に代 わる地域振興策の交渉で、早めに中止を認めては不利に働く、との 計算もある。

 地元市町の援護もなく、苦しい説明に終始する澄田知事。自民党 と農水省の方針を受ける形で、中止を認めざるを得ない状況だ。

 ■自民は都市を意識

 自民党本部の動きには、六月の衆院選で苦戦した都市部を意識し 「公共事業ばらまき批判」をかわそうとの狙いがある。一方、島根 県内では「田舎には公共事業が必要」と訴えた自民党候補が圧勝し た。地元が未練を残すなか中央からの圧力によって、事業の是非に 揺れた大型公共事業に、終止符が打たれる。


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