第65回 中国文化賞

受賞者の業績と横顔
長町三生氏
   ながまち・みつお
兵庫県生まれ
▽63年、広島大大学院教育学研究科心理学専攻博士課程修了▽78年、同大工学部教授▽95年、同大地域共同研究センター長▽01年、広島国際大人間環境学部長▽06年、萩国際大副理事長
感性工学を創設

長町 三生氏(72)

=呉市

 「ヒットの法則」考案


 「おしゃれ」「すっきり」といった消費者の漠然とした嗜好(しこう)を分析し、科学的手法で具体化、商品開発に反映させる―。現在さまざまな業界でベースとなっている「感性工学」の提唱者。平たく言えば「ヒットの法則」の生みの親だ。

 広島大工学部の助手だった1960年代後半、米国の大学で1年間、自動車の安全問題を研究。日本ではまだ関心が薄かったユーザーの視点に着目した。

 帰国後間もなく、心理学や人間工学などを基礎に研究を始めた。「新しい分野を立ち上げるのは苦労の連続だった」。最初に取り組んだのは、満足度が高いマイホームづくり。「広々とした」「落ち着きのある」…。住宅会社の営業マンと客が交わす言葉を記録。800語を分析し、設計に生かす研究を重ねた。

 85年、消費者が口にする漠然としたイメージから家の図面を起こすプログラムを完成。「あれが感性工学の基礎となった」。ビデオカメラや冷蔵庫、ブラジャー、乗用車などの分野に応用。30種類のヒット商品が生まれた。

 当初、自らが名付けた感性工学は学会で「学問ではない」と相手にされなかった。しかし、ヒットの実績が研究者たちを納得させた。「感性の時代」とも共鳴した。98年、日本感性工学会の設立に寄与。「Kansei Engineering」は世界語となった。

 現在はベンチャー企業「国際感性デザイン研究所」代表として、新分野に挑む。認知症患者の治療用具もその1つ。「受賞をきっかけに地元企業にも注目してもらいたい」と夢を膨らませた。(西村文)