| 愛媛でも海砂違法採取 |
瀬戸内海での海砂採取をめぐり、第六管区海上保安本部は二十日までに、愛媛県内のすべての採取業者が同県の認可量を超えて海砂を採っていた、として、二十三業者と代表者や採取船船長ら六十三人を砂利採取法違反の疑いで広島地検などへ書類送検した。全業者とも「違法と知りながら繰り返していた」などと、容疑を認めている。広島県内の三十一全業者が既に広島県警や同保安本部に同容疑で起訴、書類送検されており、海砂の超過採取は瀬戸内海の広範囲で常態化していた疑いが強まったことで、市民グループなどは一斉に反発を強めている。
愛媛県海域を管内に持つ尾道、呉、松山、今治の四海上保安部の調べでは、今治市の拓斗海運(阪部欣治社長)が一昨年一月から昨年六月にかけて、知事の認可した採取量計二十四万九千立方メートルに対し、約二倍の五十万四千立方メートルを採取したのをはじめ、十六業者は一昨年から昨年にかけての一年半の間に認可量の二・一―一・二倍の海砂をそれぞれ採取していた疑い。他の業者も一昨年一月から昨年十二月までの二年間に、認可量の一・五―一・二倍の海砂を採取したり、決められた操業日数を超えていた疑い。
調べに対し、各業者は「他の業者も違法採取していて、やらなければ損だと思った」「大型船に替えてスペースが出来たので、容量いっぱい積めばそれだけもうかった」などと供述。六管は、超過採取は海砂採取業界ぐるみで慣行化し、違反を当然視する風潮があった、とみている。
愛媛県内では、七海域で海砂採取を認めており、昨年の知事認可量は約四百六十万立方メートル。全業者の書類送検で、少なくとも二年前から超過採取が行われていた疑いが強まった。
六管は、広島県内の全業者による超過採取が発覚した昨年十二月上旬、「広島だけが違法操業する特別な事情はないはず」として、岡山、愛媛、香川県内の全業者についても同容疑で捜査を開始。任意で事情聴取を進め、裏付けが取れた愛媛県内の業者の採取分について今回、書類送検に踏み切った。
愛媛県の全業者は今年一月、県の調査に対し超過採取を認めたため、県が一カ月間の採取停止を指導。二月上旬から、二十三業者が指導に応じたが、順次、再開している。県は、刑事処分が出た段階であらためて、砂利採取法に基づき操業停止などの行政処分を検討する。
![]() 愛媛県の調査に対し超過採取を認め、一カ月の採取停止の後で操業を再開した同県の海砂採取船 (3月12日、愛媛県越智郡大三島町沖) |
「海砂採取のルールは愛媛でも守られていなかった」。広島県で発覚した業界ぐるみの海砂違法採取が、対岸の愛媛県側でも常態化している疑いが強まった二十日、愛媛県内の市民団体などからは、あらためて採取の全面禁止を求める声が上がった。違法採取は、どこまで広がりを見せるのか。岡山、香川県の全業者に対する、第六管区海上保安本部の任意捜査はなお続いている。
「以前から聞いていたことだが、やはり全業者がかかわっていた。愛媛県の監視はどうなっていたのだろう」。「愛媛環境ネットワーク」代表の阿部悦子さん(48)は憤りを隠さない。漁獲量の減少を嘆く漁民、細っていく海岸や砂浜を目の当たりにするたび、「実際の採取量が許可量内に収まっているはずはない」と感じてきたからだ。
「海上保安部の一斉摘発は、遅すぎたのではないか」。同県の調査に対し、全業者が超過採取などを認めてから、約三カ月後の書類送検。阿部さんは「今回、捜査で違法採取の実態がはっきりした以上、愛媛県は広島に次いで採取を禁止すべきだ」と強調した。
「違法採取は言語道断だ」。二月に発足した今治市の「美しく豊かな瀬戸内海を育てる会」事務局長の越智優治郎さん(67)は、強い怒りをみせる。「これを機に採取がやめられるよう、愛媛県も輸入砂の利用など海砂の代替材を真剣に検討してほしい」と望んだ。
広島県内の業者については、広島地裁の公判で次々と採取実態が明らかにされている。ある業者の三月の初公判で、検察側は「海砂の窃盗に近い」と指摘。別の業者は「超過採取は悪いことだが、この業界では全国どこでも、やっている」とも証言した。
こうした中で明るみに出た愛媛県の違法採取の実態。竹原市海砂採取全面禁止同盟会の世話人代表、吉田徳成さん(69)は業者側の問題に加え、「公共工事で砂を必要とするため、どの県にも違法採取を容認する体質が背景にあったのではないか」と指摘する。
中国新聞社が十八日、竹原市周辺の元海砂採取区域で実施した海底撮影調査では、海砂が採り尽くされ、小石ばかりになった海底、粘土層までむき出しになった地点も確認できた。超過採取の影響も大きい、とみられる。
調査に同行した広島県豊田郡安芸津町の漁業島村一郎さん(67)は「広島と愛媛もポンプを主体にした採取法は同じはず。砂層の厚さ、採取年数の差はあっても、同じような影響が出ている恐れは否定できない」と話した。