|
【社説】何とも奇妙な選挙戦ではある。足元の景気が月を追うごとに悪化し、回復の兆しが一向に見えないのに、目下の舌戦では、当面の景気対策がほとんど論議されない。参院選公示後初の日曜日にTV放映された党首討論でも、小泉純一郎首相の掲げる構造改革とそれに伴う「痛み」をめぐる応酬ばかりが目立った。経済の枠組み論も結構だが、現場の動きに即した論戦が欲しい。
公示前日の十一日、内閣府は月例経済報告で「景気は悪化している」と発表した。小泉内閣発足直前の四月は「景気は弱含んでいる」だったが、五月に「景気はさらに弱含んでいる」とし、六月には「景気は悪化しつつある」と下方修正を重ねた揚げ句の判断である。しかも、直接の対応策を示さず「経済財政構造改革の基本方針に従い、不良債権問題の抜本的解決とともに改革のための七つのプログラムを実施する」と強調している。構造改革こそが最大の景気対策と言わんばかりだ。小泉内閣が国民の高い支持率を得ているとはいえ、無策にすぎないか。野党ももっと追及すべきだろう。
確かに構造改革路線への期待は強い。「痛み」が懸念される中小企業の中でも、研究開発に力を入れている広島市西区の経営者は「画一的な産業保護策よりも、聖域なき構造改革を優先してほしい」と言い切る。
参院選での勝利を確実にしたいという与党側の思惑も見え隠れする。自民党との関係が深い建設業界などからは「今は改革の大波に乗っていればいい。細かい政策に触れる必要はない」との声も聞こえる。
「構造改革か景気回復か」といった二者択一の論議をする段階はとっくに終わっている。景気回復といっても、従来型の財政出動による公共事業の拡大路線を支持する人はもはや、ほとんどいないだろう。与野党ともこの点での認識にさほど違いはない。
しかし、構造改革が各論に入り、実行段階に移るにつれて、景気対策は決して避けて通れない課題として重みを増す。最重点となっている不良債権の処理にしても、中小企業の経営環境が改善されなければ、金融機関が抱える不良債権は減らない、との指摘もある。失業率が既に過去最悪の水準に並ぶなど、雇用の「痛み」も将来の問題ではなく、当面の緊急課題なのである。
例えば、中小企業への支援策で、今年三月で打ち切られた金融安定化特別保証制度の効果はどれだけあったのか、形を変えてでも再開する必要はないか。また、失業者の増大を防ぐため、労働時間の短縮などで雇用を分かち合うワークシェアリングを本格導入すべきではないか。こういった景気対策論議は改革論の具体化にもつながる。キャッチフレーズはもういい。トンネルの出口に向けて進む一歩一歩を大切にしたい。
   
|