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【社説】小泉内閣の構造改革方針に伴う安全網論議で雇用と並ぶ柱になるのが社会保障。政府は介護保険を昨年度から実施し、国費などによる福祉措置から国民に一定の自己負担を促す方向にハンドルを切っている。財政改革を優先して、国の体力回復を重視するか、それとも谷間にある人たちに目を向けて福祉の底上げを図っていくか。その選択を考えていく糸口は介護保険にある。
広島市内にこんな事例がある。七十歳代の夫婦で、失業中の二男家族と同居している。夫婦の収入源は年金で合わせても月十万円強しかない。要介護4の夫の利用支払い額(全額の一割)を工面することはとうてい無理で、サービスを受けていない。妻が介護をすべて負い、心身ともにいつ倒れてもおかしくない状況だ。介護保険によって介護の社会化が進むとされているが、ここでは家族の負担が逆に重くなっている。
今後の雇用悪化が予想される中、この家族のようなケースが増えることもありうる。
中国新聞社は参院選を前に中国五県の有権者千人を対象に意識調査を実施した。その中の「介護保険の改善点」(複数回答)でもそうした傾向がうかがえた。「介護している家族への支援金」が51・8%で一番多く、二番目は「保険料・利用料は本人や家族の所得に応じて支払額の幅を広げる」の45・6%だった。家族へのしわ寄せや経済面の不安は根強い。
現行の介護保険では社会的弱者にしわ寄せがいく。被保険者に所得の大小に関係なく負担を求めているからだ。その根本にあるのは、増え続ける老人医療費の抑制対策だ。七十歳以上の医療費は、その三割を国、県、市町村で負担する。高齢化が急速に進めば、財政が持ちこたえられなくなる恐れもある。
負の連鎖を断ち切るには、介護関連医療費を介護保険に移して、国民の自己負担を極力引き出すのが手っ取り早い。その延長線上に社会保障制度全般の見直しもある。
これでは弱者切り捨ての「付け回し」と言えないか。求められるのは財政改革と国民福祉の向上をつなぐ論議である。しかし二律背反を伴うだけに各党は明確な論点を回避。公約は総花的で国民へ議論を投げかけているようにはみえない。
一部に消費税の使途を介護保険、年金など社会保障の財源に限定していく主張がある。もっとも社会保障費が膨らんでゆけば、早晩税率アップが避けられなくなる。そうなれば消費税率は低所得層の負担が相対的に重くなる逆進性を持つだけに、消費税そのものの手直しも必要など、問題が拡散しかねない。
介護保険問題は財政問題と表裏一体である。社会保障ばかりか財政の枠組みや国の方向性を決める重要な要素になる。厚生労働省は二〇〇三年に一部手直しを予定しているが、官僚頼みではいかにも安易である。政治的な決断が入らない限り、状況もそう変わらないであろう。
各党は介護保険を検証し、それに基づく具体的な改善方法、全体の見取り図などを広く提示する必要がある。有権者も自分の生き方を問うテーマとして真剣に考えよう。
   
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