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【社説】広島県甲田町。人口約六千人の山あいの町は今、し尿と生活排水
を併せて処理する合併浄化槽の普及に力を入れている。従来、公共
下水道、農業集落排水、合併浄化槽の三種類に分かれ、担当課も別
々だったのを環境整備課に一本化したうえで、費用がかからず工事
期間も短い合併浄化槽の設置に主力を移したのだ。
一見、当然のことにも見える。それがなぜ、これまでできなかっ
たのか。公共下水道はかつての建設省、合併浄化槽は厚生省、農業
集落排水は農水省という国の縦割り行政に町も従ってきたからであ
る。補助金も、県の担当部局もばらばらのため町行政もそれに倣っ
たのだ。
甲田町の場合、自主財源は三割自治にも満たない25パーセントに
過ぎない。44パーセントが地方交付税で、残りが国、県の補助金。
黙って補助金行政に頼っていれば、そこそこの施設整備が進んでき
た。
同町の今井正町長は「住民のためにどの下水施設が良いかではな
くて、国―県―町と縦割りで流れるシステムに乗っている方が行政
とすれば楽。無駄と思っても補助金は使わねば損というところもあ
る。それが地方の自立を妨げてもきた」と指摘する。
国と地方の税収比率は三対二なのに、歳出総額では二対三と逆転
している。この差を埋めているのが補助金や交付税。交付税は全国
どこでも住民が標準的な行政サービスを受けられるよう、税収の少
ない自治体でも必要経費が保障されるように配分されている。
しかし、直接の自分たちの金でないと思えば無駄を除く努力が鈍
り、使途の工夫も生まれない。このため、補助金や交付税を見直
し、思い切って最初から地方に渡そうというのが税源の地方移譲で
ある。
税源移譲は各党とも総論では賛成している。日本記者クラブへの
七党の文書回答でも大きな違いはない。だが、交付税、補助金の見
直しといっても具体的にどうするのか、税源移譲をどの税目で行う
のか―などになると、どの党も明確でない。各党は地方財政を含
め、もっと具体的に「地方分権」「地方の在り方」を論じるべきだ
ろう。
有権者も地方交付税や道路特定財源の見直しなどを「地方の切り
捨て」「都市対地方」の対立と矮小(わいしょう)化するべきでは
ない。日本全体のためにはどうあるべきかを考えるべきだ。
今井町長は、道路についても「県道まではともかく、町道レベル
で本当に上下二車線が必要だろうか」と問い掛ける。一車線で幅員
のある歩道があった方が、高齢者の多い住民には優しいのではない
のかと言うのだ。
不必要なものはやめ、無駄を省こうという意識が今こそ国、地方
を問わず大切になっている。選挙では立候補者を見抜く眼力に合わ
せ、有権者の意識も問われている。
   
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