中国新聞・参院選2001
小泉「改革」 各論実行の正念場だ '01/7/31

 【社説】参院選で自民党が圧勝した空前の人気について小泉純一郎首相は 「これから下り坂になるかもしれない」と漏らした。国民に支持さ れた「聖域なき改革」がいよいよ各論の実行段階に入り、決意の中 にも難関を控えた危機感と不安がにじむ。

 自民党の膨脹は形の上で首相に力を与えたが「抵抗勢力」も増え たのではないか。首相が求めた派閥離脱に応じた候補者はほとんど なく、相変わらずの派閥選挙がまかり通った。抵抗勢力の軸といわ れる最大派閥の橋本派は最重点候補だけでも二十三人が当選し、衆 参合わせた数は他派閥が改選前と同数か以下に後退した半面で百数 人に増えそうだ。比例代表の当選者も二十人の半数以上が特定郵便 局長会をはじめ建設業、土地改良、農協など各種団体の代表で、橋 本派が多い。

 内閣の「骨太方針」に基づく旧来型公共事業の削減、特定道路財 源の見直し、特殊法人の廃止・民営化、郵政三事業の見直し、地方 交付税の削減などに反対論が高まると予想される。首相はこれらの 具体的な方向づけを参院選後に論議すると説明してきた。このため 選挙中には態度を明らかにせず当選し「これから言いたいことを言 う」と豪語する議員も少なくない。官僚や地方の反発とも絡んで既 得権益にしがみつく族議員の論理が強まる恐れが多分にある。

 小泉政権安定化の選挙結果に市場は好感しない。株価の下げ足が 止まらず景気に展望が出てこないと「マイナス成長にしない」国際 公約も危うくなる。選挙戦で野党内から景気対策がないと批判が出 た。与党内にも補正予算編成を含めた財政出動で景気浮揚を、との 主張が頭を持ち上げている。首相はきのうの会見で「情勢を見なが ら大胆、慎重に」と説明。当面の手立て、秋の対策、年末の予算編 成の三段階で対応すると、補正予算化の考えも示唆した。

 首相に望みたいのは公約通り、国債発行三十兆円以下の基本線に 沿って骨太方針の具体化を予算に反映することだ。抵抗勢力に押さ れて骨抜きになり旧来型の財政出動も認めるようなことになった ら、看板倒れになり国民の信頼を失うことは百も承知だろう。橋本 派や江藤・亀井派は党三役を出しておらず、情勢によっては体制批 判を強め政権を揺るがす事態へ発展する可能性もある。

 首相は「自民党が改革の原動力」と強調しながら、抵抗勢力につ いて「賛成しなくても理解してくれるだろう」と語った。弱気では ないか。徹底的に各論の論議を深め、賛成勢力を増やさねばならな い。国民が改革の方向に多数を与えた重みを踏まえれば、同党内に も従来の発想を超える潮流が高まると信じたい。

 改革の「痛み」について、首相は「業界や個人でまちまちだ。我 慢とヤル気を」と呼び掛けた。失業者支援のセーフティーネットの 具体策が見えない。不良債権の処理に伴い、金融機関やゼネコンの 救済にまた多額な公的資金を投入して責任追及をおろそかにする半 面、弱者対策が手薄になれば国民の願いに反する。敗北した野党側 も、改革の各論を軌道に乗せる努力が必要だ。それが改革論議を透 明にして、国民が監視を強め推進することにつながる。


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