![]() |
| 今治港の内港に勢ぞろいした渡海船。荷物を提げた人たち が、慣れた足取りで歩み板を渡る |
島回りの高速船やフェリーがひっきりなしに往来する。その今治港と島を結ぶ「便利屋」が渡海船である。荷物一個あたり二、三百円。島の商店に卸すコメや酒、個人あての宅配便など、あらゆる物を運ぶ。
魚島の「天狗丸」は、植田光治さん(68)が四代目の船長。妻の章子さん(64)と二人で週に四回、約三十キロ離れた今治と島を片道二時間かけて往復する。
![]() |
| 島に向かい、港を出た船。20トン足らずの船が、水しぶきを上げ て走る |
二十トン足らずの船はエンジン音を上げ、白波を立てて海原を進む。魚島の手前で高井神島に寄った。桟橋に降ろしたのは、小学校あての段ボール一箱。船が港を出るころ、手押し車の女性職員が取りに来た。
昭和三十年代には五十隻を数えた渡海船だが、今は八隻が残るだけ。今治と大島を結ぶフェリーが就航し、島内の道路が整備されるにつれ、数が減った。船長の一人は来島大橋の完成後をにらみ、船の操業をトラックを使った運送業に切り替えた。
大島で唯一の渡海船、「友浦丸」を操る渡辺利一さん(58)は二年前、大手宅配業者の専属契約を打ち切られた。扱う荷が増え、車でフェリーを使っても元が取れるようになったのか…。説明はない。「じゃが、二つや三つの荷物でも、島まで車で運ぶやろか。うちやないといかんゆう人もおる」。自分を励ますように、つぶやく。
![]() |
| 4代目船長がかじを取る「天狗丸」の看板。後継者はいな い |
その日の積み荷には、一箱ずつのミカンとナシがあった。今治に出た娘が、島で独り暮らしをする母親に毎月、届けている荷物だ。「割に合わんと思うこともあるが、お客さんがおる限り続けたい」と阿部さん。
架橋を前に最近、テレビ取材が増えた。渡辺さんは「そんなに珍しいんかのう」と首をかしげる。歩み板と人情が似合う渡海船には、懐かしさが詰まっている。

