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海と関係が深い岩城島の秋祭り。航海の安全を祈る「御船(みふね)」の踊り子が、フェリーの上でかい練りをする |
太鼓の音やだんじりを担ぐ男たちのかけ声が、秋祭り最中の岩城島に響く。岩城八幡神社のある島南部、通称「町内(まちうち)」では、祭りの間中、家々でごちそうが振る舞われる。その数、約三百軒。世帯数の七割に上る。祭り前の二、三日、酒屋は普段の数倍を売り上げるという。
役場の住民生活課、原博彦課長(55)が、八十軒を回るというので、同行させてもらった。助役ら同僚、元議長、役場職員OBらの家を、順番に訪ねる。一軒にかける時間は十分前後で、ペース配分かビールは口を付けるだけ。それでも、三十軒目を超すころには足取りが怪しくなった。
「集落全体で飲み食いをすることなんてないからね。御案内いただいたところは、回りたい」。最近の釣りの成果を聞いたり、子供を島外に出したお年寄りのつかの間の話し相手になったり。時には、OBから小言をちょうだいすることもあった。
南地区の秋祭りのほか、北地区のお大師さん、東西各地区の大般若と、島には大きな行事が年に四回ある。それぞれに「お接待」があり、祭りに集まる人々を互いにもてなし合う風習が根付いている。
主が消防団長、息子が農協職員と役場職員という一家。絶えず人が訪れ、家族総出で接待に明け暮れた |
「おやじの時代には、接待の酒代で月給が飛んだらしい」と、同課の児島公尊さん(48)。金銭的には以前ほど負担にならないだろうが、徹夜で料理を作り、客の相手をする女性たちは大変だ。「ぼくらにとっては親の代からの文化だけど、島の外から来た人は、何と無駄なことかと思うだろうなあ」
島には、スナックもパチンコ屋もない。祭りは貴重な社交場なのだ。「この日のために、一年中胃薬の世話になっているようなもんです」。原さんはそう苦笑しつつ、島の無礼講の一日を大切にしている。

