そう快・・・広がる絶景


■ 潮風のサイクリング ■

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 いでもこいでもなかなか進まない。坂道用にギアチェンジして軽くしたペダルを、だるい足にむちを打って踏む。何とか、自転車を降りずに坂道を上り切ったら、大三島橋の北側に鼻栗瀬戸が広がっていた。所どころに、小さな渦が巻いているのが見える。

 その日、尾道サイクリングクラブの目的地は、伯方町の開山(ひらきやま)だった。クラブ創設以来初の落後者になるのではないかという一抹の不安を抱えながら、後輪七段、前輪三段の変速付きロードサイクルを借りて最後尾に連なった。

 尾道から因島へ船で渡り、生口島、大三島を通って伯方島へ入る往復八十キロの行程。伯方島は、世話役の香本昌義さん(63)=尾道市長江一丁目=が最も推すコースだ。「二つの海峡があって、これぞしまなみの極め付きですよ」。二車線分を使った大三島橋の自転車専用道は、ゆったりしている。延々と続く坂道を越えた達成感もあって、橋の上の走行はそう快だった。潮風が、心地よい。


大三島(手前)と伯方島に挟まれた鼻栗瀬戸に、白いアーチの大三島が映える。表情豊かな瀬戸の眺めに、上り坂の疲れも吹き飛ぶ(左から四人目が香本さん)
 秋、尾道市内で自転車店を経営する元競輪選手の高橋正明さん(50)と同好会をつくった香本さんは、定年後の健康づくりに自転車を始めた。足を延ばして県境を越えると、自転車道が整備されていて、格段に走りやすかった。

 以前、大三島を一周した時のこと。道路わきすぐのミカンが黄色く実っていた。「メンバーが自転車を止めて思わず手を伸ばしそうになったら、農家の人が『好きなだけ持っていきんさいや』と。島ならではの触れ合いだよね」

 月一回の定例会を重ねるごとに会員が増え、現在は三十四人。一年前から本格的に始めた会社員の石森一則さん(55)は、元来の旅行好き。「自転車は行動範囲が広い。車で目的地へ行って歩いて回るのとは、見て回れる範囲が違う」と自転車の魅力を語る。

 は、帰り道、並走する高橋さんの車に乗せてもらうつもりだった。が、信号待ちなどで横をすり抜けるメンバーの姿を見て、気が変わった。どうせなら帰りも体で風を感じようと、おしりの痛みも忘れて自転車に乗ってしまった。

 クラブでは、自転車で走る人のためのガイドマップ作りや愛媛県の愛好者との連携を進めている。「しまなみには、車で行ったのでは味わえない良さがある。多々羅大橋が完成したら、また一つ魅力が増えるだろうな」。香本さんらは、来年五月一日の開通を心待ちにしている。



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