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一九九九年元日の夜明け前。真っ暗で物音一つない愛媛県越智郡生名村の村民体育館に、軽装にスニーカーの村人たち約七十人が集まってきた。ひと走りして山頂で初日の出を迎える「新春走り初め大会」は、スポーツ合宿村構想を掲げる生名村ならではの行事。村の体育協会の主催で、六八年から開かれている。
立石山登山道まで一キロ余りの距離を、海岸沿いに走る。新年を迎えた感慨もあってか、冷え込んだ朝の冷気が心地よい。東方の弓削島上空が白み始める。山道を二十分ほど歩き、標高一三六メートルの山頂にたどり着いた。
初日の出を見に、立石山山頂へ向かう人たち。日の出間近の空と海が、オレンジ色に輝く |
「ご来光を見られるんは四年に一度」「お神酒をささげんからよ」。待たされながらも、常連らがどこかすがすがしい顔で軽口をたたく。結局、日の出を拝むのはあきらめ、万歳三唱で新年を祝った。
「正月に一風変わった行事をしようじゃないか」と始めたのが走り初め大会。「地場産業もないし、生名にはスポーツぐらいしかないからね」。島の人は冗談めかして言うが、ぐるりと囲む島々を眺めながらの島一周マラソンには、県外の愛好者も毎年多く参加する。近隣では珍しいモーターバイクのサーキット場もあり、三年前には温水プールや合宿施設のある総合運動公園が完成した。
「スポーツの島をアピールするには村人自身がスポーツに関心がないとね」。昨年夏まで運動公園の管理にあたっていた村上寛仁さん(48)も、久々に走り初めに顔を見せた。
初もうでに向かう下山の途中、雲の上から二十五分遅れの日の出がのぞいた。「明けましておめでとうございます」。待ちわびた瞬間に、かしわ手を打つ音が聞こえてきた。
走り初めやソフトボールのリーグ戦など身近な大会が、スポーツの島の下地を築いてきた。「振興のために、先輩たちがずっと世話してきましたからね」。参加者と新年の祈願を終えた神社で、現会長の濱田建一さん(43)が引き継いだ意志を言葉にした。二月には駅伝大会が控えている。

