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愛媛県越智郡上浦町盛は、愛媛で最も本州に近い港の町である。ここでは十六に分けた組を、「株(かぶ)」と呼ぶ。とんどをずっと世話しているのは東端の四番株。十七年前に始めたのが、盛全体の行事になった。
「子供が楽しめればいいと思って。動機といっても、それだけですよ」。午前八時には、美農克文さん(48)ら四番株の住民二十人余りが集まった。「四番株の十九世帯で小学生がおるんは二世帯やけど、皆が集まってくれるんです」
一九三二年に当時の教員らが編さんした「盛郷土読本」という書がある。その中に、人手が必要な時に集落で手伝い合う「こうろく」というしきたりの説明があった。半世紀をはるかに過ぎて、校庭には今も「こうろく」の光景がある。
盛小学校で四番株が毎年開くとんど焼き。最後の卒業生となる6年生が、作文を読んだ
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盛小学校はこの春、閉校になる。上浦町にある盛、井口、瀬戸崎の三校が統合し、新しい「上浦小学校」になる。とんどの神事に姿を現した神主は、町長の高橋幸意さん(70)だった。「それにしても、ここを何に使うたらええかの」
校庭の隅に、枝を二十メートルほど広げたクスの大木がある。その下に、電柱を使ったベンチがある。「あそこがええ日陰になるんです。どこからか入ってきて休んでいる人をよく見かけます」と、橋田一美教頭(45)。「学校ゆうても公園みたいな感じで、触れ合い の場ですからね」
なだらかな傾斜の上に、集落が密集する盛。長男が結婚すると、親や兄弟が離れなどに移り住む「隠居制度」が、今も残る。
火にかざした竹筒の酒を振る舞っていた織田輝雄さん(55)は、毎年、小学校の運動会を楽しみにしていた。「子供の声が聞こえるだけで活気があるからね」。火がくすぶりかけても、男たちは酒を、子供はもちを手に、校庭を去ろうとしない。
「やっぱり、子供時代を過ごしたここがええ」。織田さんは因島で働いていたが盛へ戻り、今は竹原市の会社に勤めている。「けど、よそで育った子供らは、盛へ帰ってくるんじゃろうか」。織田さんのつぶやきが煙にまぎれ、空へ昇る。

