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待合所の沖側の軒に、黄色のランプがある。港に近づいた船は降りる客や荷物がない時、汽笛を一回だけ鳴らす。ランプを点灯して回し、「乗客も荷物もない」と知らせると、船は沖を通り過ぎる。数年前までは、桟橋から旗を振って合図していた。
汽笛を聞いて、待合所から出てきた村山さん。愛用の手押し車に載せる荷物はめっきり減った
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「昔は荷物も多くてね。待合所から桟橋へ大八車で何回も往復しよった」。車の宅配が増えた今、決まって届くのは新聞の折り込み広告ぐらい。時々、しょうゆ問屋のみそや、贈り物のミカンなどが持ち込まれる。大八車は、小ぶりの手押し車に変わった。
広さ六畳ほどの待合所には切符売り場があり、村山さんはこたつにあたって過ごす。六時五十八分の始発から終便まで十二時間、待合所を留守にすることはない。「船が着いたらお客さんがおらんでも、そのたび桟橋のハナ(端)まで出ていくよ」。仕事へのこだわりに、四十年来、港の顔であり続ける村山さんの自負がにじむ。
乗客で知らない顔は、まずない。今治行きの始発フェリーには、通学の高校生が四、五人乗り込む。昼間はランプを回すことも多いが、病院へ行くお年寄りが一人二人、港を訪れる。「橋が架かったら船が減って、みんな、お医者へ行くのにどないする?と、こぼしよります」
終便の今治発フェリーは、午後七時三十八分に着く。最近は、さらに遅い便がある隣町のフェリーを利用する学生が増え、夜の友浦港に下り立つ人は減った。それでも村山さんは、出迎えが終わるまで、待合所の明かりをともし続ける。「電気がついとったら、友浦に帰ったきたとほっとする」という学生の言葉が耳に残っている。
「船をやりよったもんの責任があるけんね。足腰が立つ間は港へ行くつもり」。村山さんの顔に、笑いじわが幾重にも寄った。

