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「ここ荒神瀬戸は、船が潮にのまれて深く沈むと恐れられた場所。潮流は最大で十ノットにもなります」。漁船を仕立てた観潮船のはなに座り、ハンドマイクの声を張り上げていたのは、愛媛県越智郡宮窪町、水軍ふるさと会の村上利雄さん(51)。役場職員で、以前、町内の水軍資料館を管理していた。「いろんな史跡や資料に触れ、学者らの話を聞くうち、この町は宝を持っていると気付いてね」。水軍にのめり込んだ。
宮窪港沖にある能島は、瀬戸内海を制した村上水軍の本拠地。城跡に立つまでもなく、船で島に近づこうとすれば、潮流を知り尽くした水軍の天然の要害を実感できる。
漁船を仕立てた観潮船で、能島を巡る。後方は伯方・大島大橋
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四月には、広島県から団体客が訪れた。先祖供養と春の行楽を兼ねて来た芦品郡新市町の荒木允子さん(54)夫妻ら二十五人。荒木さんは九州出身で、古里と村上水軍との縁を知った。島巡りだけでなく、鎌倉時代の供養塔、宝篋(きょう)印塔などにも参った。
荒木さんが宮窪町を訪れたのは、昨年十一月以来、三度目。「海の風景を楽しみ、水軍に想像をめぐらせて、見どころいっぱいの町。それに人との出会いもね」。三回とも、ふるさと会が案内役を買って出た。
史跡巡りのバスや船には、Uターンしてふるさと会会員になった村上陸司さん(57)も乗り込んだ。出丸があった能島横の鯛崎島(たいざきじま)に立った陸司さんは、子供のころに思いをはせた。「海岸沿いにできる潮と逆の流れを利用して、ろこぎの舟でよく釣りに来よった。ここらは潮と地形を知らんと、行きたい所に行けんからね」
ふるさと会は、新たな構想を温めている。町内のあちらこちらに放置されたままの、五輪塔の学術調査だ。それに、善根宿のように民家を開放しようか、大島石などの産業を紹介しようか・・・。魅力発信の仕掛けづくりが、片時も利雄さんらの頭から離れない。

