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来島海峡大橋を西側から望む愛媛県越智郡吉海町椋名(むくな)の海岸。昨年から地元の青年会によって再現されている、イワシ網漁の光景である。
今年二回目の漁をした四月三日は、あいにくの月夜だった。県漁連に勤め、漁もしている塩見昌弘さん(41)が、午後七時から火船に乗り込んだ。ライトは水中灯二基と合わせ、五百ワットが五つ。発電機でともす。
集まったイワシが逃げないよう、網は潮が止まる時刻に入れる。零時半の満潮時を過ぎても塩見さんはなかなかゴーサインを出さなかった。後で聞いたら、「まだ沖で潮が流れよった。少しでも、よおけ取りたいから」。生業でなく楽しむための漁でも、いざ始めたら本気。海とかかわる人の、意気込みを感じた。
光に寄ったイワシの群れを網に入れ、浜から引く。伝統の漁に気がはやるのは昔も今も同じ
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「昔の漁法を復活させる狙いもあるけど、皆が集まってわいわいやるのが良かろ」。網を引いた青年会長の白石浩三さん(37)も、小学生のころの胸の高まりをよく覚えている。「夜中じゃろうが、自転車で海岸へ走りよった」。共通の思い出が、メンバーを駆り立てる。三月から毎週土曜に火船を浮かべ、イワシの魚影を観察してきた。
昨年は地域の人らが懐かしがり、初日には二百人が海岸に集まった。当たり外れがあって見物客は減ったが、今月三日の晩も女性二人が長靴を履いてやってきた。「捕れたばかりのイワシを焼くと、身が反り返っていたのを覚えとる。この時期のは、脂が乗っておいしいんよね」。一時すぎになって海岸に打ち上げられた網には、百五十匹ほどのイワシがかかっていた。ギラギラと輝く銀色の体が跳ねていた。
イワシ網漁を手伝う渦浦漁協は今春、町内に新しく整備された道路の法(のり)面にドングリを植樹した。生態系の視点から海を守る取り組みである。
とび職人だった白石さんは、つい最近まで来島海峡大橋の建設足場の解体作業をしていた。「二百メートル上から漁船やフェリーを見て、海にかかわりたいと思った」。五月から遊覧船を始める。「不安は尽きんけど、海の生活に戻れるわけやから」と白石さん。海と共に生きた原体験が、椋名の人々を動かしている。

