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(5)つくられる景観 交流が海との調和築く
多々羅大橋の全長千四百八十mは斜張橋としては世界一。主塔の高さ二百二十六メートルはつり橋を含めて世界三位。「いかにおとなしく、小ぶりなデザインにするか、苦心した」と千葉大工学部教授の杉山和雄(56)。本四公団が一九八八年に設けた景観委員会(九人)の委員である。 橋の透視性に配慮 海と島そして人々の営みが織り成す多島美の景観を縫うように、しまなみ海道は走る。人工構造物の橋は風景に果たして溶け込むのか。三ルートの中でも、景観論議が大きな比重を占めた。 多々羅の当初計画はつり橋だった。が、ケーブルを固定するアンカレイジ(重し)が海岸地形を大きく変える。公団は「工費面でも安くできる」と斜張橋に切り替えた。ただ橋げたを直接支える斜張橋の主塔は、つり橋に比べ、どうしても高くなる。 景観委員会は岬や海上など約十カ所から、橋の見え方を検討した。その結果、橋の姿が周辺の風景を極力しゃ断しないように工夫を凝らした。主塔には空洞を設け、ケーブル配列は主塔近くで間隔を広げた。こうして風景に対して透視性の高い橋が生まれた。 造形の連続美追求 委員によって受け止め方は異なる。「周辺の島々に比べ、少し強い感じがする」と杉山。新居浜市出身のイラストレーター真鍋博(66)は「島が折り重なる海域ではないから、自己主張があっていい」と言う。 一方、海峡の二つの小島伝いに架かる三連つり橋の来島海峡大橋。ここでは、自然との融和が一層重視された。橋脚をできるだけ島に建てず、沖合に離した。周りの島々とのバランスを考え、アンカレイジを小型化。橋げたに薄くスマートな箱型を採用した。 風景の連続性にも配慮した。六本の主塔は、大島側から今治へと緩やかに高くなるように設計。白い渦潮をバックにリズミカルな造型美を演出した。杉山教授は「小島を橋脚で足げりした印象があった瀬戸大橋の反省が生かされた」。別の委員で元国立公園協会会長の大井道夫(76)は「自然にへりくだった感じがする」と満足げだ。
橋の色も景観を左右する要素である。しまなみルート最初の大三島橋では、環境庁と協議を重ね、日本画家の東山魁夷(90)にも相談。多島海に溶け込みやすいライトグレーに決まった。以降、新尾道大橋を除く全橋で採用している。 こうして造られた巨大架橋は、いつになれば多島海の風景になじむのか。真鍋は「今の子どもたちが成人になるまでぐらいの時間がかかる」とみる。時間をかけ、海との絶妙な調和を築いて来た人工構造物もある。その代表格が世界文化遺産の厳島神社だ。信仰の対象となり、にぎわいを呼び込んだことが大きい。 広島県向島町に住む彫刻家、高橋秀幸(42)は「橋の場合も、多くの人が使い、交流を生み出せるかどうかがカギ」と魅力的な地域づくりが風格ある景観をつくりだす、と考えている。
(敬称略)
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