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(6)長寿橋への道 管理技術の向上目指す
費用は塗装の半分 尾道水道にかかる、長さ五百四十六メートルの鉄げたの塗装面積は十二万平方メートルもある。広島市民球場のざっと十倍だ。しかもその内部は補強材が複雑に組み込まれていて、塗装面積は全体の三分の二、八万平方メートルも占めている。 これまで、潮風にさらされる海峡部の鉄げたは、外部だと六重、内部は三重の塗装を施すのがセオリーだった。外側の重塗装に比べ、内側は乾燥させるだけとは無防備すぎないか。 「鉄は水と酸素に触れるとすぐにサビる。だが湿度を六〇%以下に保てば、結露が出ず、サビは抑えられる」と本四公団向島工事事務所技術課長の金子正猪(44)は明言する。しかも、塗装の初期投資は二億七千万円から八千万円へ三分の一以下に減少。塗り替えサイクルを四十年とした場合のメンテナンスコストを加えても、費用は塗装の場合のほぼ半額で済むという。 空気送りサビ防ぐ 本四架橋は巨大な鉄の塊である。最初の大三島橋が開通してから十九年、予想外のサビに泣かされてきた。 一九八九年、完成から六年目を迎えた因島大橋で、橋げたを支えるケーブルにサビが見つかった。ゴムなどによる頑丈な包装材を切り開くと、ケーブルの下側に点々とサビがあった。放置すれば、鋼製のピアノ線切断の恐れもあった。 「こんなに早い時期のサビの発生は想定していなかった。このままではやばい、と感じた」。その四年後、向島管理事務所長に赴任し、対策を講じた阿部和智(51)=現・第一管理局保全部長=は振り返る。 阿部は、ケーブルに乾燥空気を流し、結露を防ぐ試験をした。ピアノ線一万千五百五十七本が束ねられたケーブル内部の、ごく小さなすき間を伝わり、風は通った。以来、本四公団はつり橋ケーブルのサビ防止はこの手法をとる。そして新尾道では鉄げたのサビ防止策にもつながったのだ。 海中のケーソンにもサビは出た。発見は九一年、現場は開通三年後の瀬戸大橋だった。表面がサビ、あちこちに直径二―三センチ、深さ数ミリの穴が開く孔食という現象だ。瀬戸大橋を点検している第二管理局は新年度、電流を使った特殊な防食作戦に乗り出す。
本四架橋は、百五十年に一、二度来る大型台風やマグニチュード八―八・五の地震にも耐えられる設計になっている。維持施設部長の村田正信(52)は「想定をはるかに超えるような台風や地震に見舞われない限り、半永久的に持つ」という。毎年百億円程度かけるメンテナンスがその前提だ。 半世紀前、アメリカで建設されたスパン(主塔間距離)千メートルを超す長大橋は今、老朽化が著しい。切れたピアノ線を溶接補修したケースもある、という。元公団総裁の山根孟(70)は「社会資産を維持管理し、部分的に更新していくのは、新しくつくるより、はるかに難しい」と指摘する。日本の橋梁(りょう)技術の重点は、長大橋から長寿橋へとシフトし始めている。
(敬称略)
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