1998.10.23 
title (7)借金返済

頼みは通行料と出資金

Graph  民間の旅行情報誌が今年九月、関東と東海で六百人に聞いたアンケートがある。しまなみ海道の来春開通を知っている人は一七・三%にすぎなかった。

 「まだ知名度が低い。一台でも多く通ってもらえるよう、PRに向け協力態勢を」。広島、愛媛両県の自治体関係者を集めて七月に発足した、しまなみ海道のプロモーション会議で、本四公団業務部調査役の大西寿(47)が呼び掛けた。

三橋を一括で計算

 借金で橋を作り、利用者の通行料金で返済する。それが本四架橋の基本である。三橋プール制と呼ばれる仕組みを、家族に例えてみよう。長男の瀬戸大橋、二男の神戸―鳴門ルート、三男のしまなみ海道は、本四公団を親とする一家。家計は一つだ。本年度末で三兆八千六百億円と見込まれる借金が今後、三兄弟の肩に重くのし掛かる。

 長男は十年前に開通した。当初、一日約二万五千台の通行量を見込んだが、昨年度になってもまだ一万六千台余り。稼ぎ頭と目される二男の明石海峡大橋は、四月開通から九月末まで約二万九千台。目標三万台をほぼ達成しているが、観光ブーム後の不安はぬぐえない。しまなみ海道の通行量予測は三橋全体の九%台。だが「三男坊だから」と安気に構えてはおれない。

photo
愛媛県上浦町の大三島橋料金所。予測通り通行量が増えるかどうかが、借金返済のカギを握る
本年度出資800億円

 公団は昨年、返済期間を三十三年から五十年間に延長するなど償還計画を見直した。中身をみると、利息分が六兆三千億円と借金額を大きく上回り、返済のため借金を続けるサラ金地獄に似ている。「三橋の工事が終われば有利子負債は増やさず、出資金で賄いたい」と本四公団総裁の藤原良一(63)。最後に頼るのは、出資金を出す国と十府県市の関係自治体である。

 本年度の出資金総額は、前年より約百五十億円多い八百億円。自治体は大半を起債の形で、借金してねん出している。岡山県の出資金は本年度、九億円余り増えて二十八億八千九百万円に。「財政状況は大変厳しいが、公団の強い要請があった。他の府県市と協調して対応せざるを得ない」。昨年九月の岡山県議会での答弁で知事石井正弘は苦しい胸のうちを語った。

 公団が見直した償還計画の予測交通量は、三橋完成時点(一九九九年度)で計約三万八千台。三十四年後には計七万七千台余りと倍増を見込む。「五十年間の償還計画を寸分たがわずできるか、神ならぬ身には分からない。不確定要素もあるが、計画に大きなぶれは起きないと思う」と藤原。まだ経済成長は続く、との見通しに依拠した予測である。

 前の償還計画の見込み違いは、通行量予測の基本となる国の経済予測が狂ったことが大きな要因。今度は大丈夫か。「まだバラ色すぎる。景気低迷を考慮して予測の姿勢を改めるべきだ。瀬戸大橋の時はシミュレーションと言えたが、もうそんな言い訳はできないのだから」と岡山大経済学部教授の中村良平(45)は手厳しい。

増収狙い観光に力

 三橋完成は、通行量が分散するデメリットはあるが、新たな需要を喚起するチャンスでもある。不況下で物流面など企業の動きは鈍いが、「地域イベントとの連携や、しまなみ海道と瀬戸大橋の周遊チケット発行なども検討したい」と大西。観光面での利用促進に力を入れる方針だ。

(敬称略)

indexbacknext