1998.12.17 
title (5)逆手の発想

「離島らしさ」売り物に

map  十一月末、愛媛県岩城村で一風変わった料理講習会があった。講師を務めるのは農家の主婦で、生徒は民宿や飲食店を経営するプロの料理人。しまなみ海道開通を控え、主婦たちが考えた村特産のレモンを生かした料理を参考にしようと村旅館料飲組合が企画した。

 レモン酢を使った寿司(すし)やマリネ、器や装飾にもレモンの皮や葉を利用したメニューが並んだ。「意外とレモンの苦みがないね」。民宿を経営する組合長の砂川丈夫(59)は「島を印象づける一品として料理に加えてみたい」と評価した。

観光客増へ特産を

 岩城村は、しまなみ海道周辺でも橋から外れた非架橋の島である。海道開通を機に、少しでも島を訪れる観光客を増やそうと模索を始めている。そのカギが、特産のレモン。愛媛県果樹試験場岩城分場の助言を受け、村が産地化に乗り出した。八四年に「青いレモンの島」の商標を登録。翌年から産直販売も始めた。

 国内で最初にハウス栽培を採用し、夏場の「青いレモン」を安全性の象徴として定着させた。現在、約五十戸ある栽培農家の主婦らを中心とした生活改善グループがレモン料理の発案者でもある。

 グループはレモン加工品の開発にも取り組み、五年前、レモンを使ったバターなどを作ってきた。役員の西村孝子さん(50)は「できればグループで店を開いて、料理で観光客をもてなしたい」と意気込む。

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岩城村特産のレモンを使い、主婦グループが考案した料理の講習会。プロの料理人も熱心に学んだ
島の生活情報発信

 さらに、今春ホームページを開設。特産品などの紹介に加え、バードウオッチャーのための「鳥を見てみんで」、釣り情報「釣れるんじゃがね」と、発信する内容はさまざま。担当する村産業振興課課長補佐の宮脇馨(47)は「島の生活を直接見てもらえるような工夫をした。全国に情報発信したい」と言う。

 しまなみ海道周辺の愛媛県では、生名村と弓削町も離島のまま残る。岩城村を含む三町村に橋を架け、しまなみ海道につなぐ構想もあるが、いつのことになるか分からないのが現状だ。

 生名村は「スポーツ合宿村」を掲げて町づくりに取り組む。昨年、島しょ部では珍しい温水プールを、野球場や体育館などとともに整備した「いきなスポレク公園」がオープンした。生名村助役の浜田光(70)も「いい空気、いい海がある自然条件を生かした、スポーツの場にしたい」と戦略を練る。

保養施設も計画中

 弓削町も島を保養・療養基地とする「アイランドテラピー構想」を進める。テラピーはギリシャ語で「治療」の意味。島での滞在、交流を通じて心身をリフレッシュする発想だ。中核施設となる海水温浴施設は、二〇〇〇年春のオープンを目指している。

 岩城村に赴任し、通算約二十年になる果樹試験場岩城分場長の脇義富(51)は「橋が架かってしまえば本土といっしょ。島として残るメリットをいかせないか」と、離島性を逆手に取った発想の転換を呼びかける。船しかない制約に、「裏返せば時間的なゆとりができるということ。その間、レモンの農業体験などで島を楽しんでもらうメニューづくりが欠かせない」と提案している。

(敬称略)


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