1999.1.18 
title (6)イベント作戦

1000超す企画 客よ来い

map  尾道水道の渡船を下りると、昭和初期の町並みが目に飛び込む。右側から文字が書かれた映画の宣伝看板の前を、人力車、着物姿の住民が行き交う。旅人も着物に着替え、一緒にタイムスリップ―。

レトロな町並みに

 しまなみ海道の開通を祝うコアイベントの一つ、向島レトロタウン。昨年十二月の会合で住民が提案したアイデアをまとめると、こんなイメージになる。

 広島県向島町兼吉。尾道市街地を指呼の間に望む町並みは昭和初期、渡船の発着場として全盛期を迎えた。しなまみ海道開通を契機に古い町並みを化粧直しして、にぎわいを呼び戻そうという試み。それがレトロタウン構想である。

 構想は、広島県しまなみ海道’99イベント協会が地元に投げかけた。協会がレトロ看板と人力車の費用を負担し、すでに映画会社に注文している。細かい演出は地元住民らが考え、実施する。

 十二月の会合には、町商工会や町、女性団体、地元兼吉商店会の幹部らも集まった。昭和初期の仮装で住民が一日を過ごすコンクールをはじめ女性たちの手による駄菓子屋の運営、製塩用具の展示などのプランが飛び出した。「町の広報紙で古い写真を募集し、仮装の参考にしてみたら」。「御輿(みこし)もかついでもらえないか」「写生大会も」。会話は弾んだ。

 現在の兼吉商店会は約三十軒。昭和初期に軒を並べたおけ屋、かさ屋、かじ屋は姿を消し、畳店、理髪店、飲食店などが残るだけ。だが、渡船の乗り場には大林宣彦監督の映画「あした」に使われた木造ロケセットが移設され、バス待合室として活用されている。

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レトロタウンで売り出す向島町兼吉地区。住民たちは演出の知恵を絞る
「一過性はやめて」

 乗り場向かいに事務所を構えるメンテナンス業、筒井勇(69)は収集した骨とうを一年前から事務所そばに移し、いわば私設ミニ博物館を開設した。明治期の柱時計や馬鈴などが並び、レトロムードづくりに早くも一役買う。商店会会長の勝島幸儀(48)は「しまなみ開通で、向島に渡る観光客は増えるはず。一過性でないイベントに」と構想に期待を込める。

 広島、愛媛両県が開く記念イベントは四月から十月まで。観光客を囲い込む博覧会方式を取らず、島々などを舞台にリレー開催方式を目指す。全国的な知名度はまだ高くないだけに、「イベントで開通を盛り上げ、しまなみ海道の魅力を全国に向け発信したい」と広島県イベント協会事務局長の香川義明(55)。

3年で37億円投入

 軸になるコアイベントも、向島町内では向島洋らんセンターなどに世界各地の植物園自慢のランを集めた世界ラン展、隣の因島市では水軍歴史絵巻とめじろ押し。個人で参加できる自主企画物も含め、イベントの総数は両県で千を超す。

 広島県イベント協会と愛媛県イベント実行委の一九九九年度まで三年間の人件費をのぞく事業予算は約三十七億円。二十億二千五百万円を支出する広島側の内訳はイベント費が十二億円、広告宣伝費にも四億二千万円を注ぎ込む。

 だが、開通翌年からイベント事業費はゼロになる。広島、愛媛を元気の輪で結ぶ「架け橋」にするためにも、一過性のイベントに終わらさない仕掛けが必要だ。向島洋らんセンター所長の林原透(53)は「地元とイベント協会が情報を共有し、住民を巻き込んだ展開を目指すべき」と考えている。

(敬称略)

=おわり(せとうち三橋時代取材班)


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