1998.10. 6


(4)
かさむ維持費

 − 地続き 金で買えぬ価値 − 

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高額な塗り替え料

 「塗り替え料が一億五千万・・・」。愛媛県越智郡関前村の池田深村長は一瞬、絶句した。広島県豊田郡大崎町が、今年実施している大崎上島と長島を結ぶ長島大橋(長さ四百メートル)の塗り替えに必要な金額を聞いたときの話だ。「そんなにかかるとは」と、思ってもみなかった金額に考え込んでしまった。

 農道橋は通行料金は無料だ。だが、はしの維持費は地元の自治体も負担しなくてはならない。十年から十五年ごとに一本あたり一億円前後かかるといわれる塗り替え料は、国から五五%、県から一〇%の補助金が出るものの、自主財源の少ない小さい自治体にとって大きな負担だ。

息子や孫の帰り道

 「安芸灘オレンジラインは三本なので塗り替え料は二億から三億円になるのでは」と広島県では予想する。金子直樹豊町総務課長は「そうはいっても塗り替えをしないと橋の寿命が短くなる。われわれにとって橋は金額に変えられない価値がある」と話す。

 既に島民の関心はオレンジラインから次の豊島と上蒲刈島間の第三橋に移っている。完成すれば本土とつながる橋を、若者は自分たちが利用する道として、お年寄りは家を出た息子や孫の帰り道として熱望する。

 関前村で商店を営む野村三重子さん(73)も、息子が働く広島市と道がつながることを期待する。「島も太るし地続きなら帰ってくるのも便利になる。他の人も土日に子供が帰れるようになる橋を待っている」と目を輝かせる。

海峡で二つの島に分断されていた豊浜町は、豊浜大橋で一つになり、祭りもかつて以上に町民同士のきずなを深めるようになった
 一方で、オレンジラインの三本と豊浜大橋を合わせた総工費は総額で約百十億円。長引く不況の中で、人口の少ない島への巨額な投資について、経済効果の面から「これ以上、必要あるのか」と、疑問視する声が本土側から出ているのも事実だ。

精神的ケアの力も

 島にUターンし、豊町小長港の「海の駅」に手作りパン屋の「みかんの木」を開店させた坂井幸子(26)と妹の志保さん(24)の二人はそんな声に反発する。「父が岡村島にフェリーで出作に行っている。それが橋で欠航のため帰れないという心配がなくなる。それだけでも価値がある。本土とつながれば病院とか、いろんなことで安心できる」と金で買えない橋の精神的なケアの力を訴える。

 今月四日にあったオレンジライン開通を記念した「ウォーキングフェスタ」。豊と豊浜の町長が、関前村の村長と県境の岡村大橋のたもとで固い握手を交わした。戦争後の復興期に日本を支えた島々の多くが今、時代に取り残されつつある。その中で、県境を越える橋は新たな島づくりの可能性を生み出そうとしている。

(おわり)


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