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| 島で加工した墓石を積み込むトラック。フェリーで 再び本土に出荷される (笠岡市北木島) |
笠岡市港町の工業団地の一角で東洋石材専務の河田恭志さん(31) は、工場移転の理由をこう打ち明けた。
同社は笠岡諸島の石産地、北木島にあった本社と工場を一九九三 (平成五)年、本土側に移した。笠岡湾を埋め立てた本土側の工業 団地などに、既に島の七社が移転している。
「北木で生まれ、育っただけに古里への思いは強いんですが… 」。とはいうものの河田さん自身、本社と工場を移してからは、島 に帰る回数はめっきり少なくなった。
北木島は石切り丁場の周辺に加工場が立地する。切り出した石 は、そのまま近くの加工場で、墓石などの製品となり、船、トラッ クで京阪神に出荷された。
ところが島の石より、安価な輸入石が主流になってからは事情が 一変した。韓国、中国などから船積みされた石は、まず福山、水 島、神戸などの港に揚がる。各港から北木島まではトラック便。笠 岡港から島まではフェリーである。さらに製品は逆のコースで出荷 されるのだからフェリーの輸送コスト分だけ高くつくのである。
島の加工場が並ぶ豊浦港には、石を満載した大型トラックが次々 にフェリーで到着する。先々代から採石、加工の両方を手がける檜 垣旺介さん(62)に会った。「中国からの輸入石の攻勢で北木石は大 ピンチ。島の石が一割を切る状況では打つ手がないんですわ」とぼ やく。
なぜ輸入石なのか。檜垣さんの答は明解だった。北木島では百万 円近くする墓石が、中国産なら二十万円で字を彫り、据え付けまで できるというのだ。日本の港に陸揚げした時点なら四、五万円とい う安価の理由は、中国の人件費にある。
「北木で職人の日当一万三千円のところが中国ならわずか三百円 で済む。石も露天掘りで無尽蔵。掘り出すコストもかからない。勝 負にはなりません」
輸入先は韓国が多かったが十年ほど前から中国が主流となった。 最初は原石の輸入だったのが、まもなく加工まで始める。墓石加工 に荒さが目立ったものの、日本の業者が合弁会社を設立するなどし て、日本向け墓石の加工技術を教え込んだ。品質は飛躍的に向上 し、国産とそん色ない墓石が輸入され始めた。
中国材の台頭は、北木など瀬戸内の石産地に打撃を与えていっ た。
人口の約九割が、石材関係の仕事に就く島にとって、工場移転は そのまま人口流出につながる。七五年、四千二百人だったのが現在 は二千百人余。年間約九十人ペースで減っている。
夕方、島から笠岡港行のフェリーに乗った。丁場で顔見知りにな った何人かと一緒になった。全員、島の出身だが本土側に居を構 え、島に通うのだという。
河本直輝さん(46)は六年前、本土側に家を借りた。「中、高校生 の子供が学校出るまでの間だけ島へ通勤」という。
夕方のフェリーにはどの便も本土に帰る人が多かった。石の加工 場に通う人々のせいで、島は昼間の人口が圧倒的に多い。
独身の若者が「嫁さんもらうのも、遊びに行くのも島じゃあ難儀 でな」と言うとみんながあいづちを打った。