| 人と自然 織りなす美 | ![]() |
海景 守り育てたい |
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| 瀬戸内しまなみ海道(本四連絡橋尾道―今治ルート)の五月一日開通をにらんだ「しまなみリレーセッション」の二回目が一月二十九日、「景観づくり」をテーマに因島市内であった。広島、愛媛両県からデザイナーや写真家、画家、企業・行政関係者など約五十人が参加し、海と島の景観を生かした地域づくりについて話し合った。 |
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| 第2回 景観づくり 〜因島市 |
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因島公園から望む、多島美のパノラマ(因島市)
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人工構造物はどう景観に溶け込むのか。本四公団審議役の鈴木幹啓さん(51)は「大きい橋を、繊細でかつ小さく見せるという設計をしてきた。橋げたを薄くするなど、それを可能にする技術の進歩もあった」と語った。 人工的な景観づくりには、論議が集中した。助言者の上嶋さんは、瀬戸田町の自然石護岸を「整いすぎ」と評した。脇山さんは、同町の海沿い街路にワシントンヤシが植えてあることに「なぜ瀬戸内海本来の在来種の植物を植えないのか」と疑問を呈した。 人工物をつくる際の観点として、今治市都市計画課の垣谷光慶さん(41)は「住む人が生活に取り込んで使ってこそ、息づかいやぬくもりが感じられる」。新居浜市で設計事務所を経営する白石高啓さん(57)は「住んでいる人の誇りをいかに作るか、ということだ。架橋を契機に、客観的に古里を見詰めなおすことが必要」と指摘した。 人工海岸を元に戻すことはできないのか。愛媛県では、砂浜後退を招く海砂採取が続く。伯方町の土木設計業、野間信宏さん(45)は「山砂供給を考え、藻場の造成を組み合わせた砂浜育成を考えては」と提案。河川法改正で川の工事見直しが始まっていることを踏まえ、上嶋さんは「海岸もなんとかならんか、ということは言える。だが住民がきちっとまとまって物を言う力がないと事態は動かない」と指摘した。
尾道海技学院副校長の向井邦昭さん(49)は海洋スポーツの授業を通じたグループづくりを報告。「海底掃除を年に何回かやっている。楽しむ代わりに、自然に優しい気持ちを持てる人材を育てたい」と人づくりの大切さを強調した。 伯方町の伯方塩業工場長丸本執正さん(57)は「小学校をつくる時、古い木を切ってしまった。何百年もたたねば育たないものを、簡単に取り除くのは最低限やめるべき」。尾道市のアマチュア写真家佐々木照雄さん(61)は「家庭でせっけんを使い、トイレットペーパーは流さず回収箱に入れている。自分だけでもという心掛けが広がれば、良好な環境や景観が将来に残せる」と語った。 尾道の歴史的景観を守る会幹事の大崎義男さん(50)は「景観のありようは地域、ゾーンによって違い、どう守るか画一的に論じられない。全体像を見渡したうえで、住民がセルフコントロールすることが必要。なにもしないことも環境デザインだ」と指摘。白石さんは「景観は十年ぐらいで変わり、できたものには批判も出て来る。非難ごうごうになるほど、問題点が明らかになり、より良いものが求めて行ける」と論議の勧めを説いた。
大崎さんは「ごみの持ち帰りを呼びかける運動などを展開することで、景観に対する住民の考え方を少しずつ変えられないか」と提案。上嶋さんは「沿線共通のルールをつくるためには、まず行政区域を超えた地域の一体化を実現すべき」と言い切った。
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しまなみ地域には、段々畑が放置されて荒廃が進んだ里山も少なくない。広島市の中国・地域づくり交流会事務局長の浅野ジュンさん(50)は「山が荒れ、山肌が見えていると残念。手入れが行き届いたミカン園を見るとほっとする。一度手を入れた自然は、やっぱりまた手を入れていかないといけないのでは」と暮らしがはぐくんだ景観の保全に関心を寄せた。 同じく広島市の都市環境デザイナー、花輪恒さん(51)も「荒れたまま放置されている所がいっぱいある。景観を売り物にする観光はこんなものではない」と指摘。「橋が架かるから観光というのではなく、自分たちの身近な景観をどうしていくか、が大切。それが結果として観光につながるくらいの気持ちでやらないと」と付け加えた。 一方、瀬戸田町でユースホステルを経営している大本城基さん(61)は、カンキツ栽培の風景に浸れる町内の高根島を推す。「都会から島に来る目的はリラックス。何もなくてもオレンジ色に染まる十一、十二月のミカン園は迫力がある」と述べた。 地域の生業、生活史が織りなす景観を再評価する地元住民サイドの動きも紹介された。 愛媛県大三島町商工会青年部副部長で、大山祇神社の参道整備委員でもある村上恭雄さん(37)は参道商店街の再生に意欲を見せた。「神社の門前町として、どんなたたずまいがふさわしいか、知恵を絞っている。石畳にすると、ちょっとは町が明るくなるのでは」 尾道市で明治、大正時代の商都の歴史を探求するグループ・ANTを結成しているサインデザイン会社経営、平野陽文さん(49)はレトロ看板の保存に取り組む。「今ある古い物をちゃんと残していく努力が必要だ」と指摘した。 因島市花いっぱい運動推進協議会会長の小森晋さん(72)も「神田氏から段々畑はピラミッドという指摘を受けた。因島には立派なものがあるのに気付いていなかった」と改めて足元を見詰め直した。 また、ライフワークとしてストーリー性のある風景を描き続けている松山市の日本画家、森庄平さん(60)は「地域の文化をベースにもう一度、風景を見直してみよう」と訴えた。
段々畑の頂まですっぽり覆った白いじゅうたん。因島はかつて、日本一の除虫菊栽培地だった。暮らしと景観をめぐる論議の中で、その再生が象徴的なテーマになった。口火を切ったのは写真歴四十八年という因島市の水呉実さん(73)だった。「三十年くらい前、美しい除虫菊畑が広がっていた。今はネコの額くらい。このままでは絶滅だ。除虫菊保存会ができたらよい。せめて写真になるくらいの面積はほしい」。撮りためたスライドも見せた。 花輪さんも「除虫菊がたくさんあると思って来るが、ない。花いっぱい運動で除虫菊畑の再生に取り誇りも出てくるのでは」と提案した。 「除虫菊にロマンと興味を感じている」という因島フラワーセンター所長、神野一大さん(55)は「耕作放棄地を保全する観点からも、いろいろな場所でもう一度除虫菊を咲かせよう」と呼びかけた。「除虫菊の情報発信基地としての役割も果たしたい」。五月十四日から六月二日まで、センターで除虫菊の写真展を開催する計画も披露した。 ただ、「一番の問題は経費と担い手」と神野さん。森さんは、再生の前提として「地域農業の歴史を大事にしようという住民の気持ちこそが大切なのでは」と指摘した。
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瀬戸内海に三番目の橋が架かる。島の人々が「うちの島は変わっていない。うれしいね」と言えるような景観になってほしい。だから「ここだけは、絶対残しましょう」と、きっちり選別する必要がある。 瀬戸内海と同様に閉鎖性海域である地中海沿岸には、木が面積の五%しかない。そのためフランスでは、自然を残そうする思いが強い。開発する時には、海岸に自然石を置き、後背地には、グリーンゾーンを設けないといけない。 フランスに隣接するモナコでも、保護海岸がある。野鳥が飛来し、海中には魚がうようよ泳いでいる。海岸にはゴミもない。ただしイヌ、自転車を締め出し、釣りやスキューバダイビングができない。潮騒の音をさえぎるため、ラジオの持ち込みも禁止だ。ルールを破れば、三日間、投獄されるという共通のペナルティーを設けている。 一方、日本では自然に対する思いが、フランスやモナコに比べて低い。松が枯れても驚かない。自然はいつか戻るだろうという考えで進んできた。「水に流す」という表現もあり、開発優先の発想で失われた人情とルールをどう取り戻すか。景観を守るための大きな宿題だ。
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外国人が棚田を「日本のピラミッド」と呼んだが、瀬戸内のあちこちには今でも、耕して天に至る段々畑という「島のピラミッド」が、生きた景観として残っている。これは、島の農業の歴史そのものだ。 正徳年間(1711―1716年)には島々に、少々の日照りでも育つサツマイモが普及。食料確保のため、畑は山の上へ上へと広がった。大正時代に入ると、除虫菊が、さらに畑を山のてっぺんまで押し上げた。 段々畑は、夕立が来れば、流されることもあり、常に人が管理していないと崩れる。築造の歴史は、人間の血と汗の結晶である。 しかし、ミカンブームも去り、それに代わる作物がないうえ、人々の高齢化で、段々畑が増えている。手当てをしないと崩落し、このピラミッドは急速に荒廃する。生きた景観として維持できなくなるだろう。島民の努力だけでは、どうにもならない時期に来ている。 耕作可能な土地を維持するため、土地保全、土壌浸食防止のための技術開発も欠かせない。段々畑のオーナー制を導入したり、一町に一カ所の保全地区をつくるなど、文化財的な位置づけで守っていく必要がある。 また段々畑の景観を守ることが、長寿と健康をもたらしてきた事実も見逃せない。瀬戸内海に、長寿の島が集中し、そこの段々畑には野菜が青々と育ってきた。現在、因島で杜仲茶、向島ではキウイなどが育てられている。 白砂青松の浜も保護したい。段々畑とセットで、瀬戸内の暮らしがはぐくんだ景観を残したい。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

