'99.3.29    

  ’99しまなみシンポ

しまなみリレーセッション
特別講演 「瀬戸内しまなみ大学」学長 平山郁夫さん

遊びながら新しい文化を

「ふるさとしまなみ海道」

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「瀬戸内しまなみ大学」
学長平山郁夫さん

ひらやま・いくお

1930年広島県瀬戸田町生まれ。日本画家。日本美術院理事長。前東京芸術大学長。ユネスコ親善大使・世界文化遺産担当特別顧問。本年度、文化勲章を受章。「瀬戸内しまな大学」学長に就任した。


「島々が橋でつながるように、21世紀に向け、しまなみ大学を発展させたい」と語る平山さん
 瀬戸内しまなみ大学の開学と入学、おめでとうございます。

 私は生口島に生まれ、毎日、海や向かいの大三島などを見て育った。シルクロードは何十万キロも、百数十回も歩いたが、船でないと行けない大三島へはわずか数回しか行っていない。、近くて遠い場所だった。そういう意味で、島に橋が通ることは画期的だ。

 日本の国家成立や文化を振り返ると、瀬戸内海は歴史を支えてきたメーンルートだった。大和政権誕生時、勢力は九州から大和へ移った。大陸の文化や文物が瀬戸内海を島伝いに流れ、島は文化を受け入れた。

 島々は自然の海に守られて独自の文化をはぐくみ、近いのにそれぞれ異なった面をもつ。その島が一本の道でつながるが、画一化はしないことだ。長い時間をかけて培ってきた暮らしぶりや伝統など個性を大切にしながら、新しいものをつくり出す必要がある。

 海との共生は日常生活から生まれ、新しい文化を築く。自然のなぎさ、海草の生育などの観察は食糧問題にも通じる。瀬戸内海の汚染問題も、しまなみ大学の皆さんが地域に調査ポイントを設け、毎日、海水を調べて資料を瀬戸内海にある大学に提供し、分析を依頼すれば、汚染原因などが分かり、日本の海洋問題を世界に発信できる。生命の起源は海。海の研究は進んでいるようで未解明の部分が多く、海から学ぶことはたくさん残っている。

 偏差値重視の詰め込み教育からは、新しい発見や二十一世紀の発想は生まれない。子供の時から潮の流れや魚の生育を観察するなど、遊びながら自然と対話する中で知的基礎体力がつく。謙虚に自然を見つめ直し、何が大事かを自覚する必要がある。この美しい瀬戸内海にはその環境と材料があり、しまなみ海道の住民は天から与えられた貴重な宝物の中で生きている。

 しまなみ海道の住民全員がしまなみ大学に入学し、新しい日本を築き直す心構えで出発すれば、やがて素晴らしい日本が生まれる。島々が橋でつながるように、二十一世紀の夢を抱きながら、しまなみ大学を発展させたいと思う。



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