中国新聞社

'99.4.26
土産物づくりにかける     
 大三島 

ミカンを活用 苦心の改良

「近いですね」

map  尾道から向島、因島を経て生口島の垂水港からフェリーに乗る。多々羅大橋の見える大三島の井口港(愛媛県越智郡上浦町)まで十五分。尾道の「自然に親しむ会」副会長の横山直江さん(50)=尾道市美ノ郷町=は「生まれて初めて」大三島に降り立った。「ずいぶん近いんですね。これまでなぜ来なかったのかしら」

 横山さんと向かったのは全国の国宝、重要文化財の武具、甲冑(かっちゅう)の八割が集まるという大山祇神社の近く。越智郡大三島町が整備、三月末オープンしたばかりの観光案内施設「しまなみの駅御(み)島」だ。町生活研究グループ連絡協議会前会長の越智久子さん(47)と会長になったばかりの藤田敏子さん(67)が迎えてくれた。

 白いエプロン姿の二人は食品加工室でミカンを使ったコンニャクゼリーの試作中。これまで商品化したミカンクッキー、ミカンあめ、ミカンまんじゅうに続く夏の土産物の目玉にする計画という。添えられたイチゴを見た横山さんは「ちっちゃくてかわいい」。越智さんは「規格外なので経費の節約にもなるのよ」と説明する。

プロ意識大切

 越智さんたちは、土産物づくりの苦心談を披露する。無農薬ミカンと添加物不使用にこだわり、昨年九月から朝市で売り出して町民の意見をもとに何度も改良を重ねた。横山さんは「アイデアを形にし、売るって大変なのね」とうなずく。

 町内のミカン農家の若手後継者グループ「オレンジ会」会長の越智秀和さん(46)と、メンバーの田坂寧広さん(50)が話の輪に加わった。「プロ意識に徹して採算がとれる値段にしないと長続きしないよ」。全国に百軒以上の得意先を開拓し、毎年ミカンなどの産直で生計を立てる二人の経験が生きる。

 秀和さんは安全でおいしいミカンづくりにこだわり、宅配のミカン箱に畑で取れたレモンなどの「おまけ」とともにアンケートはがきを入れる。消費者との顔の見える関係を大切にしたいからだ。「長雨で全国的に出来が悪い年もある。でも『あんなが作ったんならしょうがない』と納得してくれる」。ミカンを縁に知り合い、年に一度は訪ねてくるファンが何人もいる。

PHOT
横山さん(中央)を囲んでミカンを生かした交流のアイデアを話し合う左から藤田さん、越智久子さんと、越智秀和さん、田坂さん(愛媛県大三島町の「しまなみの駅御島」)
知識教え合う

 藤田さんは「駅での対面販売で、おいしいとほめられると、それだけでうれしい」。例えばミカンを丸ごと煮詰めるミカンあめ。地元では古くからのおやつで、「まさかお金になるとは思わなかった」。今では人気商品だ。

 「呼んでいただければいつでも講習しますよ」と横山さんが身を乗り出したのは、田坂さんが「島を見回すと商品になる芽がたくさんある」と、島に自生する薬草に触れた時。見分け方は、子供たちに野山で自然の素材を活用した工作を教える「魔女の自然教室」も主宰する横山さんの得意分野だ。

 持参したタンポポ茶を振る舞いながら、横山さんが「その代わり」と切り出したのがテングサなど食べられる海藻の見分け方。「一度、大潮の時にいらっしゃい。何でも教えるよ」。みんなが声をそろえた。

 秀和さんは言う。「橋で島の良さが失われるかも。でもできたからには、島の人みんなが道に迷った車に声を掛け、知り合いをたくさん作るチャンスにしたい」。藤田さんたちのグループは、開通後に訪れる観光客と手作りの土産物を通した交流を目指す。

 <大三島町生活研究グループ連絡協議会
町内で活動する弥生会、ほほえみ、フレッシュ会の三グループ二十四人。昨年七月から橋の開通に向けて特産のミカンを使った土産物の商品開発に取り組んでいる。

 <オレンジ会
町内のミカンなど果物農家の若手後継者六人のグループ。十五年前から無人市に取り組み、十四年前からは大阪府豊中市の女性団体と産直交流を続けている。


しまなみ新景

(1)

MenuNext