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12 不況の中でも


不況の中でも
昨年、初の国体出場を果たした広島日野自動車軟式野球部

「人材」求め採用続ける

 厳しい不況の中で、運動部を廃部、活動縮小する企業は多い。逆 に、「こういう時期こそ」と、積極的に力を入れる企業も存在す る。その狙いは従来の宣伝効果と大きく異なり、人材としての価値 を重視する傾向も見られる。

 広島県安芸郡坂町に本社がある広島日野自動車の軟式野球部は現 在、部員が十七人。昨年、予選を突破し、初めて国体出場権(一般 B)を獲得した。「ほとんどが、広島六大学や中国六大学リーグの 硬式経験者で、甲子園に出た選手もいる。レベルは高い」と、倉西 太野球部長(37)。この不況下でも毎年、五人前後の選手を補強し続 けてきた。その成果が、現在のチーム力に現れている。

 「もちろん、うちも厳しい状況にあることは変わりはない」。瀬 川竜男取締役・営業部長(55)は明言する。それでも、野球経験者を 採り続ける意図は、スポーツ選手を人材として評価しているところ にある。「明るい性格の者が多いし、組織に順応する能力を持って いる。選手ではなく、一般社員として採っている」と瀬川部長。実 際、部員の営業成績は、社内でもトップクラスにある。

地域の受け皿の意味も

 人材として採っている以上、仕事は定時までが原則となる。集合 練習は土、日曜日しかなく、競技環境は恵まれているとは言えな い。「野球と仕事の両立はきついだろうが、会社として支援は続け ていく。野球は人材育成の場でもあるから」(瀬川部長)。明確な 存在意図の上に、部は成り立っている。

 硬式野球部(リースキン広島)を持つ東洋観光グループは昨年二 月、女子柔道部を設立した。きっかけは、広島県で女子選手が競技 を続ける受け皿がなかったからだ。「思い切ったことをするという 声もあったが、企業としてスポーツの大切さを実感している」と、 今井誠則代表(53)は言う。

 広告効果は、初めから期待していなかった。「やはり人材確保と 育成でしょうね。厳しい時代だからこそ、優秀な人材がほしい。元 気で仕事のできる人間が集まれば、グループ全体の活性化にもな る」。地域のスポーツ支援と人材発掘。逆風の中で、チームを持つ 意義をそう説明した。

 「うちでもチームを維持できている。多くのチームがなくなった が、休、廃部にしなくても済んだチームもたくさんあったはず」 と、今井代表は言い切る。広告塔としての価値を失いつつある企業 スポーツ。撤退が相次ぐ現状は、チームの存在意義が変わりつつあ ることの現れでもある。


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