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カヌーの危機


カヌーの危機
マルニの主力選手として、世界選手権やアジア選手権で活躍した大河(右)。休部決定後、チームを去った

頼みの企業 クラブ休止

 日本のカヌー界を支えてきたマルニ(本社・廿日市市)が昨年九 月、カヌークラブの活動休止を決めた。四十年間にわたって、トッ プに君臨。延べ九人を五輪に、三十人を世界選手権に送り込み、九 八年には日本オリンピック委員会から表彰を受けた。「一企業の休 部とは意味合いが違いますよ」。同クラブの代表である元安良文・ 日本カヌー連盟専務理事(64)は言い切る。

 日本のカナディアンカヌー競技の歴史は、マルニカヌークラブの 歴史と重なる。東京五輪を前にした一九六〇(昭和三十五)年に創 部。ロサンゼルスで初の五輪入賞を果たした井上清登など、多くの トップ選手を輩出し、日本選手権でも昨年まで27連覇を果たしてき た。「仕事に関係なく練習できるチームは、マルニしかなかった」 (元安代表)。唯一、英才教育ができる環境にあったトップチーム の休部は、日本カヌー界全体を揺るがせた。

トップ育成の環境失う


 「うちくらいの会社規模で、世界を狙う選手を育ててるのは分不 相応な部分があった。それでも頑張ってきたが、こういう時代の中 で、会社としての余裕がなくなった」。広島県カヌー協会会長でも ある山中光社長(58)は説明する。年間一千万円近い活動費は大幅に 削減。ハンガリー人のコーチも四月に帰国し、選手に与えられてい た優遇措置もなくなった。当時、所属していた選手は、昨年の世界 選手権で8位入賞を果たした大河文昭選手など五人。うち四人がす でに会社を去った。

 マルニは、少なくとも五年間の活動停止を予定している。「五年 後、景気や業績が上がれば再開したい」と、山中社長はなお意欲的 だが、現実には難しいという見方も多い。「仮に景気が回復し、施 設や人材がそろっても、一度失った信頼を回復するのは、簡単なこ とではない」と、元安理事は厳しく受け止める。

 現在、日本カヌー協盟は、マルニのようにトップ育成を手がけて くれる企業を探している。「日本のアマチュアスポーツ、中でもマ イナーな競技は企業に依存し続けてきた。しかし、企業スポーツは 常に業績に左右される。これまでのように企業頼みでいいのか。今 まさに、スポーツ界のシステムが問われていると言える」(元安理 事)。カヌーが直面している危機、それは日本のアマチュアスポー ツ全体の問題でもある。


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