2001/11/24
「経費倒れ。来年は来ないかも…」。中央通り(広島市中区)に、くじ引きの露店を出す香川県丸亀市の男性(41)の口は重い。ここ五、六年、「胡子(えびす)大祭」(えびす講)での売り上げは落ちる一方だ。 昨年、二十年余り続いた歩行者天国が廃止されてからは、特に振るわない。広島県警の警備強化で、今年は交差点わきの好立地に店を開けなかった。 中央通りの周辺に並んだ露店は、昨年より十二店少ない計二百二十八店。三日間の人出は、県警の調べで約七万二千人と、昨年より二万五千人減った。五年前の約半分だ。 「昔は大人に挟まれて、子どもの足が浮くほど込んだ」。胡子神社総代会の畑壽泰会長(84)は懐かしむ。えびす講の時期は、市中心部の商店街が大売り出しをした。初冬の風物詩だった。 近くの本通りも、人であふれた。昭和四十年代には、三日間で一千万円を売り上げる店もあったという。だが、平成を迎え、陰りが見え始めた。大型店などの年間を通じた価格破壊、長引く不況、老舗(しにせ)の閉店…。深夜まで響いた売り子の声は消え、大半が早々と店を閉める。 そして二年前。中央通りで、暴走族と警官隊が衝突。県警のえびす講警備の主眼は、この年を境に雑踏整理から暴走族対策に移った。祭りの風景は様変わりした。 新天地の呉服店店長、永野精一さん(51)は「家族連れが減ったよ。暴走族と警察官ばかりの祭りに、子どもを連れて来たがらんですよ」と嘆く。 「えべっさん」は来年、毛利輝元の進出に伴って広島県吉田町から中区胡町に神社が移った、とされる「鎮座」から四百年を迎える。「市民の手に祭りを取り戻したい」。過去三度、大祭委員長を務めた広島中央通商店街振興組合の辻登理事(65)は訴える。その柱が歩行者天国の復活だ。 地元商店街と神社の総代会は年明けから、県警に復活を求める署名運動を始める方針だ。同じ中央通りを舞台にする「とうかさん」(六月)や「ひろしま春祭り」(四月)の主催団体、町内会などにも協力を仰ぐ。 歩行者天国の復活は、暴走族対策を白紙に戻しかねない側面も併せ持つ。が、辻さんは「暴走族や期待族を、押し込めるだけではいつか爆発する。少年たちの気持ちも聞いてみたい」とも言う。 暴走族が、「面倒見」を介して暴力団の支配下にある限り、接点を持つのは難しい。歩行者天国での特攻服の集会も困る。傷ついた祭りのイメージを取り戻すため「若いエネルギーを別の形で、祭りに取り込めないだろうか」。辻さんたちは思いを巡らす。 「歩行者天国の復活を、祭り再生をアピールする『安全宣言』に代えたい」。四百年目の再出発に向け、地元が立ち上がろうとしている。
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