2002/01/01
暴走の連鎖は、警察や行政任せでは断ち切れない。地域、仕事場、家族…。みんなの力を集めたい。体を張り、知恵を絞るさまざまな試みが各地にある。 (暴走族取材班)
「ワン、ツー」 「真っすぐ下がるな」 リングにげきが飛ぶ。少年たちが汗をほとばしらせ、コーチのミットめがけてパンチを繰り出す。広島県府中町の府中南小体育館。府中町ボクシングクラブは、年末の「練習納め」の夜を迎えていた。 メンバーは小学生から六十歳代まで約四十人。その中に、かつて暴走族に身を置いた少年たちが数人交じる。「『族』をやめたい」「打ち込める何かを探したい」。結成して十年。元国体選手で会社員の丸亀恭敬会長(38)は、さまざまな思いを込めた拳(こぶし)を、両手のひらで受けてきた。 きっぱり「離脱」できる少年がいる。行きつ戻りつする少年もいる。とび職の少年(16)は一昨年の春、クラブ員の前で暴走族の特攻服を脱ぐ「儀式」をした。しかし、昔の仲間と縁が切れず、バイク盗で逮捕された。 「本気で心配してくれたコーチを裏切って後悔した」。少年は今、コーチの一人である製めん業木田圭司さん(38)に紹介された建設会社で働きながら、クラブに通う。 「腕っ節」を試しに来る暴走族少年もいる。横柄な態度の少年に防具を着けさせ、リングに上げる。丸亀会長から強烈なパンチが一発、二発…。その後、トレーニングの指示などに素直に従うようになる。「離脱」が見えてくる時だ。 荒療治だ。「練習が続くのは十人のうち数人」と丸亀会長。それでも「一人が変われば周りも変わる」と信じる。 コーチたちは時折、クラブ員の離脱の交渉のため、暴走族の集会に足を運ぶ。それを見た別の少年が「ここに来れば抜けられる」と駆け込んでくることもある。 自ら「やんちゃな」少年時代を送った木田さんは言う。「彼らがいずれ、うちの子らの力になってくれるかもしれん。そのつながりが、地域の力いうもんでしょう」。昨年「青年の輝くまちづくり」を掲げ、最年少の町議になった。 クラブのOBで通信制高校に通う岡崎脩一さん(18)は、昨年末プロテストに合格した。今、町出身の元世界王者竹原慎二さんの父が経営するジムで、プロの技を磨く。 非行、暴走行為…。荒れた生活に区切りをつけるため、クラブで基礎を学び始めたのが二年前だった。出場した高校新人戦などでは、2ラウンドTKOを含め二連敗。なすすべがなかった。「鍛えているやつにはかなわない。格好や口先だけで強がっていた自分が、恥ずかしくて」 丸亀会長たちは、少年たちに言い続ける。「決められたルールの中では、まじめにやった方が勝つ」―。その言葉を胸に、岡崎さんは二月、デビュー戦のリングに上がる。
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