中国新聞
2002/01/04
みんなの力 「夢をもて」親方が喝  
(3) 授ける
 
雇い育てる 受け皿結成

  暴走族だった少年たちと現場で働く永末さん。「技術」と「自身」を授ける(広島市南区)  

 年の瀬、急ピッチで型枠工事が進む広島市南区のマンション建設現場に、人一倍の仕事を親方から任される少年がいた。ひょいと足場を上り、高所で黙々と金づちを振るう。山ちゃん、十九歳。現場で働いて三年半になる。

 一昨年の春まで暴走族のリーダーだった。明け方まで爆音を立て、走った。「仕事もできんくせに」。寝不足の顔を現場で見せると、親方で型枠工事会社社長の永末博司さん(34)=安佐南区=に怒鳴られた。それでも「僕らがつくったチームだから、絶対やめん」と決めていた。

 ある日、車の無免許運転で逮捕された。永末さんが鑑別所へ面会に来た。「親や周りのみんなが心配して動いているのに、お前の心は動かんのか」。忙しい現場をほったらかしにして捕まった。「もう会いに来てくれん」と思った。が、親方は「カンベツ」まで…。「離脱」が頭に浮かんだ転機だった。

 永末さんは今、四人の従業員を抱える。うち、山ちゃんたち三人が、かつては暴走族に身を置いていた。「仕事する意欲があるやつを拒む理由はない」。独立して十年。自らも若いころ「暴走の時代」を送った。

 彼らをほっておけない、との思いがある。「よう働くでしょう」。日々、仕事を覚えていく少年たちへのまなざしは厳しいが、温かい。

 昼は建設現場などで働き、夜は爆音をたて街を走る。そんな少年は少なくない。道交法違反容疑などで逮捕され、鑑別所、少年院…。現場はその間、貴重な労働力を失う。警官隊との衝突で短期間に五十人近い逮捕者が出た一九九九年の「えびす講騒動」の後は、多くの現場が頭を抱えた。

 「彼らを積極的に受け入れ、仕事に打ち込ませなければ」。翌年三月、親方たちが立ち上がった。暴走族の少年を雇い、社会人として育てる受け皿「DIAグループ」(二十四社)を結成した。永末さんもグループの一員だ。

 会長の近藤由雄さん(36)=中区=は「お前らには将来がある―。人との出会いを通じ、そう教えてやりたい」。今、グループ各社の現場では、百人を超える元暴走族少年たちが汗を流す。食品会社など他業種にも、賛同の動きがある。

 DIAの「D」は「DREAM(夢)」の頭文字。永末さんは「人間性は変わるもんじゃない。変わるとしたら自分の夢を持てるようになった、いうことよね」と言う。

 山ちゃんは夢に出会っていた。「社長が独立した年より早く、自分の会社を持ちたい」。木くずと砂ぼこりにまみれた顔が照れていた。

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