中国新聞
2002/02/14
広島市条例の課題 論議重ね「期待族」規制  
(上) 姫路市
 
「罰則」生徒の意見聞く

 広島市の暴走族追放条例(仮称)が、今春にも制定される見通しになった。多くの都市が抱える暴走族問題。条例づくりで先行している他地域の取り組みを紹介し、「広島モデル」の実現に向けた課題を探る。

(暴走族取材班)

  姫路城に連なる目抜き通り。罰則付き市条例であおり行為の「重点禁止区域」になった  

 JR姫路駅の北口を出ると、世界文化遺産の姫路城へ、目抜き通りが真っすぐに延びる。八百七十メートルのこの市道はかつては、週末の深夜、暴走族や見物する「期待族」が群れ集まる無法地帯だった。

 二輪車が急旋回や逆走をする。沿道からは声援が上がる。さらに警官に石を投げ、パトカーの前に立ちふさがる。暴走族が期待族を呼び、期待族が暴走族を集める悪循環。最盛期には約七百人が沿道を埋めた。

 静かな夜を取り戻したのは昨年の三月。姫路市が期待族の横行を規制する全国初の罰則付き条例を施行した時からだ。

 「市民等の安全と安心を推進する条例」。姫路駅周辺の約三ヘクタールを「重点禁止区域」に指定した。区域内では、期待族と暴走族に対し、(1)暴走行為をあおる(2)覆面をして群がる(3)刺しゅう入りの服(特攻服)を着て威勢を示す―の三点を禁止。(1)の違反者には五万円以下の罰金を適用する。

 適用例はまだないが、姫路署の古川和人交通官は「だれに、どう適用していくか、市民の声を大切にしたい」との姿勢だ。

 この六日には、条例づくりを目指す広島市議会青少年問題対策特別委員会のメンバーが、姫路市を視察に訪れた。「憲法が保障する『表現の自由』に反しないのか」との質問に、市安全安心課の中村博光課長は「刑法の専門家などから、お墨付きをもらっている」と胸を張った。

 もちろん、生みの苦しみはあった。条例案づくりが本格化するきっかけは、市中心部であった二〇〇〇年六月の「ゆかたまつり」。三日間を通じ、暴走族など二千人と警官隊が衝突。火炎瓶を投げたり、刃物を持ち歩いたりした四十七人が逮捕された。

 この騒動を受け、市がその九月の市議会定例会に条例案を提出。しかし、議会内に「少年の人権が侵される」「善良な市民が規制される」などの慎重意見が根強く、法律家団体からのクレームもあり、いったん取り下げた。

 だが、市側はへこたれなかった。暴走族と同世代の中学、高校生四百人にアンケートを実施し、94%から罰則の適用に賛成する回答を得た。生徒の公開討論会や、住民の意見交換会も開いた。

 警察、検察との会議、学識者への相談も重ねて修正案を練り上げ、議会の慎重派を説得。当初案から一年越しで、賛成多数の可決をみた。

 祭りの騒動をきっかけに、暴走族追放の声が噴出した経緯は、一九九九年に「えびす講騒動」を経験した広島市と重なる。姫路市は騒動をバネに、先例のない条例づくりに挑んだ。

 「法理論などの論議を経ながら、私たちの街の現実はどうなんや、なんとかせなあかん、という視点を貫いた」と中村課長。同じ世界文化遺産、原爆ドームを抱える平和都市に、長く求められてきた姿勢である。

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