中国新聞
2002/04/20
断ち切れ 暴走の連鎖 もどそう、平和の街  
つなごう、行動の輪
記者座談会  キャンペーンへの思い

  住民の力が暴走族少年を取り囲んだ―。呼びかけ運動の初日、「街を守る」意思が行動で示された(2月16日夜、広島市中区のアリスガーデン)  
 出発点は被害者の声

 犯罪集団

  暴走族は市民生活を脅かす犯罪集団だという共通認識で、私たちは被害の声を聞くことからキャンペーンを始めたね。

  昨年十一月のシリーズ「壊れたブレーキ」の取材で、十三歳の少年にかばんをひったくられたお年寄りは「孫のような子が」と少年の将来を憂い、悲しんでいたよ。

  暴走族から恐喝を受けた揚げ句、命を落とした少年の家族を取材した。「ぐんぐん大きくなって、すぐに運動靴を買い替えて…」と、霊前で孫の思い出を語る祖母の小さな背中が、今も忘れられない。

  「一人ひとりはいい子」という声もあるが、遺族、被害者には残酷な言葉だ。暴走の爆音に夜ごと悩まされている人にもね。

 はびこる暴力団の影

 恐怖の支配

  「面倒見」を通じた暴力団との関係は予想以上に根が深かった。

  面倒見たちは、アメとムチで巧みに引きつける。学校や地域からはじき出された少年たちは「おまえが頼り」とか「金はあるか」「飯は食ったか」という言葉に吸い寄せられる。一方で暴力団を背景にした恐怖支配も絶対的だ。

  面倒見が「今度の集会までにメンバーの数を増やせ」とハッパをかける場面も見た。そんな光景が平和都市の中心部で公然と…。異常なことだ。

  ある面倒見に「なぜ金を取るのか」と聞くと「あいつらが勝手に集めている」と言い放った。そして「あいつらの話を親身で聞く大人はほかにおる? 怒る大人もおらんじゃろ」と言われ、反論に困った。

  地域の大人と少年たちの対話が失われている実態の裏返しか。

  でも、月々の会費だけでなく、妻の出産費用や車の修理代名目などで少年たちから金集めを要求する面倒見もいる。「大人」を名乗る資格などないよ。

  組関係の花見や催しの準備、引っ越しなどの手伝いに駆り出されている少年は今もいる。そんな関係の深さに疑問を持つどころか、暗に自慢する少年もいる。問題は根深いね。

 偽りの「団結」

  少年たちは社会のルールから離れてしまっているのか。

  バイク盗やひったくりをすることに、罪の意識を持ってないかのような発言も聞いた。暴走し、壊れたり没収されたりすればまた盗む。「盗むのは簡単ですよ」と屈託なく手口を話すんだ。情けなくなった。

  「暴走族ほど団結や友情を重んじる集団はない」という少年の主張も何度か聞いた。

  脱会者へのリンチに象徴される暴力で束縛し合っているだけ。暴力団の「仁〓(にんきょう)道」と一緒で、社会のルールと無視しての「友情」「団結」になんら説得力はない。

 民の力、官を動かす

  社会のルールを示す意味で、市街地の公園で始まった地元住民の「呼びかけ運動」は画期的だった。

  二月の初回、二百五十人余りの大人たちがアリスガーデンで円陣を組む暴走族を取り囲んだ光景には取材班としても手応えを感じた。

  三月の二回目は三百人に増えた。「地域の安全は住民の手で」という意識の高まりが市の暴走族追放条例にもつながったと言える。

  迷惑なことは迷惑、悪いことは悪い、と伝える必要がある。正月のシリーズ「みんなの力」で取材したように、広島市中心部以外でもさまざまな取り組みが起こりつつある。暴走族の問題は、地域の求心力を問い直すきっかけになったとも言えるね。

  えびす講やとうかさんなどの祭りでも、彼らのエネルギーを正しい方向に導き、逆に取り込んで、真のにぎわいを生み出す知恵を出し合うべきだ。

 SOSキャッチして

 揺れる親

  三月下旬のシリーズ「『ただいま』が聞きたくて」では暴走族の子を持つ家庭にアプローチしたね。

  子どもが暴走族からの離脱を果たしたケースは、帰って来なくても夕食を作るなど「見放していない」というメッセージを親が伝え続けた家庭が多い印象がある。

  逆に「抑えつけてばかりでは」と親たちがたばこや飲酒、夜間の外出を黙認するケースが多い。物分かりの良さと放任の線引きがあいまいだと感じた。

  「子どもが王様」か。当然、子は自由をはきちがえてしまうね。

  一方で、ある暴走族相談員の「帰りたい家がない子も多い」との言葉が耳に残っている。確かに親が遊び回ったり、酒に浸ったりといったケースにも接した。親の虐待を経験した子もいると聞いた。

  学校や地域は、問題行動を繰り返す少年を「非行」と断罪するだけでなく、SOSをキャッチする心構えがいる。

 心に迫りたい

  少年たちは本当にあこがれて暴走族に入るのだろうか。

  確かに「かっこいいから」と答える少年が多い。同世代の大半が「ダサイ」と切り捨てる「特攻服」も、彼らにはファッションらしい。

  閉ざされた価値観があの服装にも表れているのかもしれないね。

  でも、安易な動機もあれば、学校や地域から排除されたという意識を抱いて入る少年も多い。

  自分の役割、存在を認めてくれるのが暴走族という集団、ということか。

  県警幹部から「不景気の影響からか、暴走族に無職の少年が増えている」との話を聞いた。職を失い、暴走族にのめり込む…。今の経済状況は少なからず影を落としているよ。

  何が駆り立てるのか。暴走の連鎖を断ち切るためにも、彼らの心の中にもっと迫る必要がありそうだ。

 【お断り】 〓は「にんべん」に「夾」という字ですが、JISにないため表示できません。

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