中国新聞
2002/04/20
断ち切れ 暴走の連鎖 もどそう、平和の街  
つなごう、行動の輪
今後の課題を探る  3氏インタビュー

広島市 秋葉 忠利 市長  
秋葉忠利市長 条例軸に地域結束を

 ―暴走族追放条例には、トップとしてどんな思いを込めましたか。

 条例は、良いことと悪いことの境界線を社会のメッセージとして明確に示し、少年たちにきちんと伝える手段だ。それと、少年らにかかわる地域団体やボランティアの人たちは、条例を通じ市民全体と考えを共有していると感じるはず。自信を持って行動してもらえる点も大事なことだ。

 ―違法な集会に対し、全国で初めて懲役を含む罰則規定を盛り込んだ内容が注目されました。

 罰則は、「本気さ」を見せる意味がある。さらに、暴力団とつながる「面倒見」による指示を防ぐ効果も期待できる。集会の自由などとのかかわりで市議会でも心配の声が出たが、確かにその通りだ。乱用するつもりはないし、今後もおかしな使い方をしないよう監視してほしい。

 ―条例に基づいて定める基本計画に何を盛り込みますか。

 暴走族の若者に共通した問題を把握し、居場所づくりや、地域・家庭・学校の連携強化、離脱システムなど、何点か問題提起したい。大切な社会のメンバーとして前向きに生きてもらうという視点が欠かせない。ある意味、罰則以上に大事な部分でもあり、今秋までにまとめたい。

 ―罰則が適用される五月一日の直後、暴走族が集まるひろしまフラワーフェスティバル(FF)が控えています。

 去年は平和記念公園などにたむろする暴走族の姿が目立ち、良くなかった。条例の周知とともに、市民全体で世界平和を願う花の祭り、というFFの意味を彼らにあらためて伝え、協力を呼び掛けたい。「正攻法」しかないと思う。

 ―暴走族対策は重要な都市問題と言えますね。

 市として全庁で取り組み、警察も頑張ってくれている。そして市中心部の住民の「呼びかけ運動」などは、自分たちの街は自分たちでつくる、自分たちで守るという決意に基づく具体的な行動だ。立ち上がった市民を見て、本当に広島らしい、いい未来になると思った。

広島市都心部環境浄化対策協議会 下井 良昭 代表幹事  
下井良昭代表幹事 「呼びかけ」粘り強く

 ―暴走族少年に帰宅を促す「呼びかけ運動」が盛り上がっていますね。

 二月の初回は二百五十人、三月の二回目にはさらに増えて三百人が参加した。中には、初回のことを知って「はよう言うてくれりゃあえかったのに」という人も。それぞれ仕事、生活がある中、土曜日の夜にあれだけ大勢はなかなか集まらない。「なんとかしないと」という危機感をため込んでいたのだろう。トラブルの心配もしていたが、全員が運動の趣旨をよく理解してくださった。

 ―週末の実態は、地元には深刻だったでしょうね。

 七、八年前から、週末の中心部は、不法改造車などで道路が大渋滞。暴走族などさまざまな集団がけんかや恐喝を繰り返し、パトカーまで襲う始末で、まるで映画で見る犯罪都市のようだった。

 ―中心部だけに広島のイメージダウンにもつながります。

 そう、ここは広島の真ん中。地元で長年生計を立ててきた私のような人間には、街への愛着も深い。「いかに言うてもこりゃいけん」と思った。若い人らも店にはお客さんだが、もう少し行儀よくしてほしい。

 ―運動の効果をどうみていますか。

 袋町公園ではたむろする少年はいなくなった。アリスガーデンも、実感としてはピーク時の五分の一ぐらいに減った。「静かになった」というご近所の声をよく聞く。

 ―運動は市条例の制定の後押しにもなったとも言えるのでは。

 さまざまな法論議があっただけに、住民の意思を見える形で伝えなかったら制定が見送られていたかもしれない。「なぜ集まってはいけんのか」と居直る少年に、住民は帰ってほしいと頼むしかなかったが、今後は条例を根拠に行動できる。

 ―暴走族問題は沈静化すると思いますか。

 今は別の場所へ移ろうとしているだけではないか。夏場になるとどうなるか。それに背後の暴力団との関係を断ち切らないと、別の問題が起こる。結局罪をかぶるのは子どもたち。取り返しのつかないことをさせてはいけない。

広島県警 竹花 豊 本部長  
竹花豊本部長 面倒見の支配にメス

 ―特別取締本部の設置以来、暴走族をめぐる状況にさまざまな変化が出ています。

 暴走行為や構成員の減少など数字上の成果は多いが、何より県民から「街の静けさが戻った」といった声が届くのがうれしい。それから、取り調べた少年たちを「なんとか立ち直らせたい」と支援する若い捜査員も多い。犯罪の摘発だけでなく、社会を良くするのも私たちの仕事。その理解が進んだのは県警にとって大きな収穫だ。

 ―取締本部は幅広い部門から捜査員を投入しましたね。

 暴走族問題は交通、少年の部門に加え、広島の場合、「面倒見」を通じた暴力団の支配実態やひったくり、オートバイ盗の常習性から刑事部門にも大きくかかわる問題だ。警察組織は、複雑化する社会事象に必ずしもマッチしなくなっている。そんな思いもあって部門の垣根を取り払った。

 ―面倒見の実態をどうみていますか。

 例えば、集会の人数や少年たちから集める金の額が、面倒見のメンツにもつながっている。少年たちも面倒見の機嫌を取るため、跳ね上がった行動を取る。そうした構図を断ち切るのを、今後の大きな課題としたい。

 ―集会を規制する広島市の条例もできました。

 集会は暴力団に支配された広島の暴走族の本質を表す問題と考えていた。住民の「呼びかけ運動」に呼応するように、スピーディーに条例を制定していただいた。警察庁時代、多くの議論を乗り越え暴対法をつくった経験がある。大切なのは、直面する社会問題に各層が連携し、どれだけ情熱を傾けるかだ。

 ―市条例の罰則規定をどう運用しますか。

 集会をめぐり、警察と暴走族が対決する構図を最初から想定すべきではない。まず市民が彼らを説得し対話を重ね、解決が無理なら市民の代表の市長が中止命令を出す。なお言うことを聞かなければ警察が出るということだ。私は社会の力を信じるし、議論が分かれるかもしれないけど、暴走族の少年たちの良識も信じたい。

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