2002/04/25
照明を落とした広島市内の大型店の駐車場に、地元の暴走族メンバーが集まっていた。そのうち何人かが「晩飯代わり」とカップめんをすすっていた。「うわ、まずー」。突然、一人が持っていた器をぶちまけた。アスファルトに黒いしみが広がった。 とがめる間もなく、メンバーたちはバイクのエンジンをかけた。「今からゲーセン(ゲームセンター)」。数台に分乗し、走り去った。 メンバーから離れていたヒデキ(17)だけ、その場に残った。傍らに髪を赤茶に染めたナオコ(18)が立っていた。「付き合って二日。これからは、この子とずっと一緒におります」。ヒデキの照れた表情に、決意が交じっていた。ナオコはうれしそうだった。 二日後、ヒデキを昼食に誘った。から揚げ定食を勢い良くかき込み、話す。「ナオコが『もう捕まらんでね』言うけえ、少年院にはもう行けん」。 金庫荒らし、傷害、集団暴走。ヒデキは昨年の秋まで一年、少年院にいた。今年十一月の胡子大祭(えびす講)で暴走族を「引退」したらナオコと住む、という。 グループは今、集団暴走などを控えている。リーダーのサトシ(17)は説明する。「取り締まりが厳しいんで、静かにしとかんと。『OB』にも言われとる」 ヒデキにはありがたい。ナオコと出会い、石工の仕事に身が入っているヒデキは「ずっとこのままがええ」とつぶやいた。 小学一年の時、母が家出した。父と子ども四人が残った。ヒデキは二番目。末の妹は生後間もなかった。「今でもキレてしまうけえ、かーちゃんには会いとうない」。きょうだいは養護施設に預けられた。 小学校では家のことでからかわれる度、けんかをした。夜、一人になると、母の背中にじゃれついた思い出と、怒りとが一緒に込み上げた。「悪さして、気を紛らわせたかった」。施設の中学生と夜の街をうろつき、バイク盗や車上狙いを覚えた。 中学に入ると、父がヒデキときょうだいを引き取った。しかし、ほどなく「悪い仲間」ができ暴走族へ。そして逮捕。「家族だんらんを目指したけど、うまくいかんかったっす」。ことさら陽気な口ぶりで続けた。「ナオコと『自分ち(家)』をつくりたいっす」 ある夜、ヒデキらのたまり場の駐車場に、近所の中学三年のユウタ(14)が母親に連れられ現れた。母親はヒデキに近づき、しきりにお礼を言った。 立ち去る母親を呼び止め、理由を聞いた。「『暴走族に入る』と家出したこの子を、ヒデキ君が探して、連絡をつけてくれたんです」。母親とばつの悪そうな息子の影がくっつき、離れながら消えた。振り向くと、ヒデキは何もなかったように、仲間とじゃれ合っていた。
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