2002/04/27
「痛っ」。大声が大型店の駐車場の暗やみに響いた。取材に応じていたシンペイ(16)が後頭部をさすり、背後を見回した。年上のメンバーが「だれがたたいたか、当ててみい」とはやす。何度も同じ事を繰り返し、取材はその度に途切れた。シンペイは反発するでもなく、困ったような笑みを浮かべるだけだった。 広島市内の暴走族メンバーである。たわいのなさに、気が抜ける。自転車で近づいた警備員が「早(はよ)う帰りんさいよ」と声をかけた。すかさずショウタ(16)が応酬した。「うるさい、ばか」。無邪気さと粗暴さ。両方の入り交じった空気が、仲間の輪の中に漂う。 メンバーは全員、建設作業などの現場で働く。仕事を終え、夜九時ごろから作業着やスポーツウエア姿で集まる。ゲームセンターへ行くこともある。午前零時に閉店したら、またどこかで「タマル」。 休日はどうしているのか。日曜の午後、同じグループのダイスケ(17)に、携帯電話をかけ取材を申し込んだ。「仕事がない日は、遊びたい。寝るのももったいないけえ、十五分で済ませてや」とつれない。なんとか説き伏せ、ダイスケたちメンバー三人とカラオケ店で会った。 三人は前夜、グループの「集会」に出て寝ていない、という。「GLAY」「黒夢」…。マイクを持つと、歌の世界に浸りきる。でも自分の番以外の時は、居眠りした。 「十八歳までは遊ばんとね」。メンバーは口をそろえる。リーダーのサトシ(17)に「遊びって、何」と聞いた。サトシは、頭をかき、考え込んだ。「みんなと一緒におることじゃないですかね」 ゲーム、カラオケ、仲間の家やたまり場でのとりとめのない会話、ガールフレンドとの時間。見る限り、彼らの「遊び」は、およそほかの同世代と変わらない。 お好み焼きを口に運びながら、シンペイはしきりに携帯電話のメールや通話の着信をチェックしていた。相手の多くは暴走族の仲間たちだ。「(年が)上の人からよくかかってきます。『ひまじゃけえ遊ぼうや』とか」。右手にヘラ、左手にケイタイ、視線はケイタイの画面だ。 携帯電話があるから逃げ場もない。別のグループのコウイチ(16)はグチった。「彼女とおる時とかに、センパイに呼び出されるのタイギイ。でも行かんわけには」。特攻服を着ない日も、グループのくびきから離れられない。 「あ、はい、失礼します」。週末、市の中心部で見かけたサトシは、仲間の輪を離れ、携帯電話を耳に当てていた。妙にあらたまった様子だった。後日、相手を聞くと「えーっと、『面倒見』だったかな…」と口ごもった。 仲間と遊ぶ相談をする時と違い、背中に緊張感が漂っていた。たわいなさを許さない相手との関係に、同世代との決定的な違いを見る思いがする。
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