中国新聞
2002/04/28
特攻服を着ない日 (6)
ウチが「けじめ」とるよ

  喫 煙

 「ひと口ちょうだい」。広島市の繁華街の喫茶店で、クミコ(17)とカズコ(17)が一つのパフェを分け合う。二人は「レディース」と総称される少女ばかりの暴走族グループのメンバーである。

 幼なじみで「親友」と認め合う二人。週末の夜、特攻服をまとい、仲間と「声出し」をする姿を何度か見た。それだけに、時折見せる柔らかい笑顔と控えめな化粧にホッとする。しかし、話の中身と素顔との落差に戸惑った。

 「クミコが途中で抜ける時は、親友のウチが『けじめ』とるよ」。カズコの言葉にクミコは当然のようにうなずく。「けじめ」。離脱を申し出たり、結束を乱した者へのリンチである。実際の経験があるカズコは「レイギとか教えてやったのに、やめるのは恩知らずじゃろ」。

 「今のメンバーは友達って言える。結局ウチら、友達探しをしとるのかもね」。クミコは屈託なく、暴力で縛り合う関係を「友達」と信じる。「ウチら、仲間思いのええ子って書いといて」。二人は寄り添い、人波に消えて行った。

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 別のグループのコウイチ(16)の話にも、心が冷え込んだ。自分たちが「縄張り」と決めた地区内を二人乗りやヘルメットなしで走るバイクの若者を見ると、どこまでも追い回し「シバく(殴る)」というのだ。

 理不尽さを説いても「おれらは(暴力団に)金払っとる。パンピー(一般人)がでかい顔するのは許せん」と耳を貸さない。「縄張り」の根拠のなさを言うと、「まあ、おれらの勝手じゃけど」と首をすくめた。

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 けじめ、縄張り…。内に外に振りかざす暴力団気取りの「おきて」に、疑問は持たないのか。

 「なんでですかねえ」。コウイチたちと別のグループのリーダー、サトシ(17)は首をかしげた。「昔から受け継がれてきたことじゃけえ…」。要領を得ないまま「『けじめ』もとらんと仕方がない。センパイからもいろいろ言われるじゃろうし」と説明した。

 いつ、だれが決めたか分からないおきてに、やみくもに従う。そんなふうだから、なけなしの所持金から暴力団関係者に毎月支払う「上納金」への意見を求めても「決まったこと」「仕方ない」といった答えしか返ってこない。

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 クミコは中学時代、暴走族を描いた漫画の主人公にあこがれた。「こんな彼氏がほしい」と思った。カズコは「クミコの家でヤンキー(不良)の服や化粧を試すとかっこよかった」。グループに入ったそれぞれの「理由」を話した。ともに高校はやめている。

 ファストフード店が集まった大型店。その一角で、フロア係として働くクミコを見た。赤茶に染めた前髪を下ろし、テーブルを一心にふいていた。仕事が、閉ざされた世界の外をのぞくきっかけになれば―。心からそう思った。

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