中国新聞
2002/04/29
特攻服を着ない日 (7)
早う親方に近づきたい

  足 元

 「そこのタイル、一枚四十五円よ」。広島市郊外の大型店の駐車場。ショウタ(16)はあごで足元を指す。「一枚でも曲がっとったら気になるんよ」。タイル工としての職人意識をのぞかせた。

 地元の暴走族のメンバーだ。中学を卒業後、今の仕事に就いた。高校には行く気がなかった。「建築や土木の世界は、現場に入るのが遅れるほどもったいない。早(はよ)う仕事を覚えたほうがええ」と説明する。

 「でも、高卒の資格は強いで」。わきから仲間のシンペイ(16)が口をはさんだ。定時制高校に通いながら、解体や建設の現場で働く。現場作業に関係する資格を取るにも、高校を卒業した方が「早道」になると主張する。「資格は働きながらでも取れる」。そう言うショウタとの議論がしばらく続いた。

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 別のグループのリーダーで、逮捕されたコウジ(17)を思い出す。「あこがれの人」を尋ねると、芸能人やスポーツ選手の名前は返ってこなかった。「きっちり仕事しとる人の話なら、聞いてみたいです」。仕事人としての将来を思い描くのは、同世代と変わらない。

 仲間のタカシ(17)は、ガソリンスタンドで働く傍ら、通信制の高校に籍を置く。その後は専門学校に行き、自動車の整備士になるのが目標だ。

 「そのためにも警察に捕まるようなことをするな」。そう言うと「暴走族のために整備士をあきらめるんなら、仕方がないっす」と返事され、面食らった。

 同じ仲間のヒロシ(17)は、高校をやめて鉄筋工などの仕事を転々とした。半年前から土木作業の現場に出ているが、今は大学入学の資格検定を受けたいという。

 「大学出たら、なんとかなりそうじゃろ」。でも、本格的に勉強を始めているわけではない。「昼間に勉強すりゃあええ」と、暴走族をやめるつもりもない。

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 「かあちゃんも無職です。きのう一緒に職安へ行ったけど、だめ」。あるグループのマサシ(15)は合格したばかりの高校に行かず、職探しをしている。

 小遣いは月四千円。面倒見に払う「会費」は三千円。「バイトより、ちゃんと仕事したい。どこでもいいっす」。ハンバーガー店で会った時、所持金はゼロだった。

 「不景気で仕事がない、それに一生現場で作業を続けるわけにもいかん」。ヒロシが大検を目指す理由だ。不況の二文字は、彼らにものしかかっていた。

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 「給料もらったら、家に金入れとるよ」「食わしてもろうとるしね」。シンペイとショウタは当然のように言った。「親方の腕は広島一。早う近づきたいんよ」。いつもぶっきらぼうなショウタの目は真剣だった。

 平日、二人を含む仲間の多くは、建材の粉や塗料がついたニッカーボッカーなどで集まる。刺しゅうの入った特攻服より断然いい。仕事人は社会人。その自覚があればなお、かっこよくなる。

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