中国新聞
2002/04/30
特攻服を着ない日 (8)
家や学校は、関係ないよ

  私 服

 取材で出会った少年、少女には「なぜ暴走族に」という問い掛けをしてきた。でも、胸に落ちる答えは、ほとんど聞けていない。

 例えば、広島市内のグループのショウタ(17)はこう答えた。「カレーが好きか、ハンバーグが好きかということ」。言葉からは、クラブ活動を選ぶような感覚しか伝わってこない。「単車が好きだから」「かっこええ」。多くの場合、そこで終わる。

 仲間のシンペイ(16)も「みんな好きでやっとる。家や学校は、関係ないよ。原因探しても仕方ないよね」とにべもない。ショウタはことわざを持ち出した。「『類は友を呼ぶ』いうこともあるし」

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 「こいつに誘われた」。別のグループのコウイチ(16)は、傍らのマサシ(15)を見やった。「同級がほしかったんよ。『パシリ(使い走り)』がおれだけじゃね」とマサシはにやけた。

 小中学校の同級生の二人は、幼いころから一緒に万引をした。ともに補導や鑑別所を経験した。コウイチは鑑別所から戻った昨年、一度は「離脱」を仲間に告げた。しかし「夜が暇じゃったし、ムチャもしたい」と戻った。

 一級年上のマナブ(16)は、バイク盗の現場を別の暴走族グループのメンバーに見られ、その場で「スカウト」された経験を持つ。「誘われたけど断わり、友達のアニキがいたので今のグループに入った」

 「レディース」のクミコ(17)は明かした。「メル友を入れたことあるよ」。携帯電話の「出会い系」サイトで「ヤンキー(不良)に興味のある子」を募った。その出会いからメールを交わし始めた少女をこれまでに二人、入会させた。「一人は飛んだ(逃げた)けどね」。クミコはたばこをくゆらせた。

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 家庭環境や、学校生活から暴走族に入る法則めいたものを探ろうとする度に、壁にぶち当たった。「うちの家族、仲がええよ」とクミコは言うし、ショウタは「中学の成績は中の上くらい、数学とか得意じゃった」と胸を張った。

 ただ、おしなべて感じることがある。「暴走の連鎖」の歯車に彼らが組み込まれるのを見逃さず、必死に歯止めをかけようとした「大人の存在」が見えにくいのだ。

 週末の夜になると、濃い化粧で集会に出かけるクミコが暴走族だという事実を「仲良し」の父親は知らないという。コウイチは父親に「(暴走族は)男なら通る道」と言われたそうだ。

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 土曜夜の市街地の公園。集会をする多くの暴走族に交じり、逮捕されたコウジ(17)が「アタマ」をしていたグループも、特攻服姿で顔をそろえていた。暗がりに、着てきた洋服やスニーカーが脱ぎ散らかしてあった。

 「悪いことをせんのよ」。自宅に遊びに来たメンバーに、コウジの母親は声を掛けたという。そのコウジの特攻服には、年下のメンバーが腕を通し、とがった目で周囲をにらんでいた。大人の「本気」は、十分に伝わっていない。

(おわり)

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