2002/06/05
広島の暴走族に寄生する「面倒見」が、四月の広島市暴走族追放条例施行をきっかけに、変わってきた。条例は面倒見を念頭に、違法な集会などの指示行為を禁止。広島県警も面倒見を介した暴力団への監視を強化する中、集会場所などに表立って現れるケースが少なくなった。しかし、暴走族を資金源にする実態は残っており、背後に潜む暴力団の影も消えていない。 (暴走族取材班)
一日の土曜日の夜。中区のアリスガーデン近くでたむろする特攻服姿の少年たちに、スーツ姿の男性が近付いた。何ごとか指示を出す。直立して聞いていた少年たちは、一斉に特攻服の上着を脱いで公園を立ち去った。 少年たちは丸めた特攻服を抱え、路地の陰で私服に着替えた。「『帰れ』と面倒見に言われたけえ」。少年は集会を開かずに帰る理由を言葉少なに説明した。特攻服は指示を受け、脱いだようだ。 例年、多くの暴走族が特攻服姿で市街地に集まる祭り「とうかさん」(七〜九日)が迫っている。「祭りにも来んよ」。ぶ然として、少年たちは薄暗い商店街に消えた。 市の追放条例は、公共の場所で許可を得ずに集会、たむろすることを禁止している。刺しゅうの入った特攻服など特異な服装で円陣を組んだりした場合、市長名で中止・退去を命令。従わない場合は、六月以下の懲役か十万円以下の罰金に処せられる。 さらに集会などを指示、命令する行為を禁止する規定もあり、違反すると教唆罪に問われる。広島の暴走族が面倒見の支配下にある実態をにらんだ条文である。 県警は、昨年以降、四月末までに延べ三十二人の面倒見を逮捕した。暴走行為の教唆や、窃盗容疑の掛けられた元暴走族メンバーをかくまったとする犯人蔵匿など、あらゆる法令を適用。面倒見が所属したり出入りしたりする暴力団の組事務所も摘発の度に捜索し、組織的な関与の解明を進めている。 昨年十一月の胡子大祭(えびす講)では三日間を通じ、市民の目の前で公然と少年たちに指示を与える面倒見の姿がアリスガーデンなどで見られた。しかし、今年四月の条例施行後、明らかに変わった。取り締まりも厳しくなる中、力を誇示するような行為は影を潜め、乗りつけた車の中から何事かを少年たちに伝える姿が目立つ。 「面倒見の側も『逆風』を感じ取っている」。県警幹部の見方だ。さらに幹部は「面倒見は組織では若手。組への突き上げ捜査はされたくないはず」とみる。 しかし、面倒見の全体像については、県警もつかみ切れていない。暴走族を引退した後もメンバーに影響力を持つ「OB」が表立った指示を行い、面倒見は背後に隠れる図式もある。暴力団との関係も正式な組員から交遊者まで濃淡がある、という。 そして、少年たちから「会費」を巻き上げる上納システムも厳然と残っている。「今日、金を集めるかもしれんけえ、用意しとってや」。五月の週末の夜、集会の合間に暴走族のリーダーが仲間に声を掛けていた。面倒見の指示を受けたとみられる。 暴走族は「資金源」―。暴力団が少年たちにまとわりつく実態は変わっていない、と県警はみる。
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