中国新聞
2002/06/06
面倒見を追う (下)  
暴力団の傘下で威力
  呪 縛  

資金集めの犯罪も誘発

  条例の網をくぐりながら結集した暴走族メンバー。裏で面倒見が糸を引く構図は変わっていない(広島市中区の本通り)  

 「『面倒見』をやるのは、ほとんどが『しのぎ』のためよね」。広島市内の暴走族グループの面倒見をしていた二十歳代の男性は振り返る。しのぎとは、暴力団の資金集めを指す。

 「メンバーから集めた金は右から左(組員)へ納めた」。メンバー一人当たり月々三千円前後。複数のグループを束ねる連合体全体なら数十万円が集まる計算になる。

 さらに、理由のはっきりしない不定期の金集めもあるという。「金がいるから子ども(メンバー)らは、ひったくりとか悪いことをするようになる。だれかが逮捕されれば人数が減り、一人の負担が増えてまた悪いことを…」。逮捕されたのを機に面倒見をやめた男性は、「連鎖」の構図を打ち明けた。

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 関係者の証言や広島県警の見方を総合すると、面倒見には暴力団組員が直接就くケースの一方、男性のように暴走族を引退した「OB」から面倒見になり、組員との橋渡しをするグループもある。

 別の元面倒見の男性は組員と「舎弟」関係を結んだ。「『兄貴』に自分の力量をアピールするため」に、メンバーに集会の動員をかけた。「言われたら、何でもする覚悟じゃった」と服従の日々を明かす。

 県警によると、昨年末現在の県内の暴走族は推定で四十二グループ、三百十人。広島市と周辺のグループにはほぼ例外なく面倒見が存在する。グループを束ねた六つの連合体には、いずれも指定暴力団共政会系の組織が控えるとみられている。

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 昨年九月には、傘下の暴走族少年を脅した男性を組事務所に連れ込んだりして、けがをさせたなどとして共政会播真組の組員らが逮捕された。暴走族と暴力団が、組織ぐるみでつながっている実態を浮かび上がらせた事件だった。

 「暴走族は暴力団にとって資金源であると同時に、新たな組員を育てる場になっている」と県警幹部。昨年、県内の元暴走族メンバーら九人が共政会の組員になったことを県警は把握している。

 「わしらがおるから、グループ同士の抗争もない。面倒見をなくしたら、ぐじゃぐじゃになる」。面倒見役をしているある組員は、自分たちの「抑止力」の側面を強調した。

 その理屈を、捜査員は否定する。「暴力団が束縛していなければ、資金源の目減りを防ぐための離脱者へのリンチや、ひったくりなどの犯罪も減る」。

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 五月の土曜日の夜、中区の中央公園。暴走族追放条例に基づいて集会をやめるよう注意する市職員に、暴走族のリーダーがたてついた。「集まって何で悪いんや」

 しかし、携帯電話が鳴ると、悪ぶった顔がとたんにひきつった。「周りに(職員らが)ようけおります」。状況を報告し「ハイ、ハイ」と何事か指示を受ける。電話の向こうに面倒見の影が見え隠れする。

 条例の施行後も、暴力団の呪縛(じゅばく)でがんじがらめになっている広島の暴走族の実態は変わらない。「『とうかさん』で暴走族がどう動くかは、面倒見と背後の暴力団の思惑次第」。県警の監視の標的は、絞られている。

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