2002/06/13
柔らかな物腰、雄弁な語り口が印象に残っています。「面倒見」役として暴走族にかかわる指定暴力団共政会系の組員に広島市中区のネオン街で初めて会ったのは、昨年十一月の夜でした。 彼は、面倒見を「必要悪」とした上で主張しました。「あいつら(暴走族)はすぐ『うちが一番』と、グループ同士でけんかになる。むちゃして死人が出んように、わしらが止めとるんです」。盛んに「抑止力」を強調しました。 「わしは違う」と言いながら「子どもに金を集めさせる、汚いやつもおる」と、上納金のシステムの存在も認めました。 取材中、反論に困った言葉がありました。「あいつらに声掛ける人がおりますか? あいつらの声を聞きたいっていうても、だれも聞いとらん。おれらが一番、聞いとるはずよ」。自信すら漂う口調でした。 確かに、元暴走族の少年(19)は、自分のいたグループの面倒見の組員を「声をかけてくれる数少ない大人」と言いました。「金はあるか」。家出していた少年に小遣いを渡したそうです。面倒見の「親身」に吸い寄せられたのです。 でも、少年はもらった小遣い以上の「上納金」を払っていました。さらに、一緒に「引退」するメンバーの中から組に入る者を選ぶよう言われたそうです。「組事務所の電話番を頼まれた」と明かす少年もいます。 「暴力団にとって暴走族は、資金源であり人材の供給源」。昨年十月に結成した広島県警の暴走族特別取締本部は面倒見への集中捜査から、その見方を固めています。 「ビッとするんがええ」。別の暴走族少年(17)は、面倒見に服従し指示、命令をされる緊張感をそう表現します。グループの一員として「役割」や「存在」を確認し、酔いしれているようでした。 この少年は振り返ります。「親も先生も、すぐになんも言わんようになった」。周囲の大人が手を焼き、あきらめ、目をそらすうちに、面倒見が支配する暴走族に飛び込んだわけです。 多くの少年、少女たちはグループと面倒見への忠誠の一方で、社会のルールへの関心を失います。二輪車盗は常習化、金集めに迫られたりしてひったくりや恐喝に走り、都市の治安を脅かします。キャンペーンで重ねて伝えてきた「暴走の連鎖」の構図です。「面倒見の存在は犯罪の『再生産装置』」と県警幹部は言い切ります。 週末の夜、中区のアリスガーデン。「特攻服」姿の少年たちは、高級車で乗り付けるなどした面倒見に駆け寄ります。「こんばんはデス」。おどおどとした目で手を後ろに組み、何事か指示をされ、首を縦に振ります。その前で威張り散らし、揚げ句に金を吸い上げる面倒見たちの救いようのなさ…。 平和都市の真ん中で繰り返されてきた現実を、あらためて直視する必要があります。この街の子どもたちを、暴力団から取り戻す出発点です。
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