2002/06/14
昨年秋のことです。元暴走族のひったくり事件に関係した生徒が通う広島市内の中学校に取材を申し込み、断られました。「そっとしてほしい。本人も親も、学校も頑張っている最中に取材を受けたら、生徒を裏切ることになる」。学校側は理由を話しました。 確かに当事者は少年で、細心の配慮が必要です。説明を聞き入れ、取材を控えることにしました。 しかし、かつて同校のPTA活動をしていた男性の言葉が気になりました。「地域を挙げて学校をよくしよう、という意気込みが学校にあるのかどうか、住民に伝わってこない」。今、何が学校で問題なのか分からない、と言います。 「暴走族問題で…」。取材の趣旨を話すと、「お話できかねます」などとガードを堅くする学校の対応に、何度か接しました。 「学校は親や地域の批判に耐えきれないから」。一昨年、教職を退いた星野昭治さん(61)=廿日市市=は指摘します。 星野さんは校長をしていた中学校で、髪を染めたり制服を着ていない生徒を教室に入れない姿勢を貫きました。そうした生徒には、空き教室でマンツーマン授業をしました。「社会にも、学校にも従うべきルールがある」。生徒を暴走の連鎖から遠ざける取り組みでした。 「子どもがみんなで学ぶ権利が侵されている」。一部の保護者からは反発が出ました。そんな中、町内会と懇談会を開きました。校内の様子を伝え、校区内でのバイク盗の急増、大型店周辺での生徒のたむろなど、実情を包み隠さず説明しました。それをきっかけに、住民の夜回りが始まったそうです。 「学校だけで解決しようとするあまり、結果として問題を放置してはならない」。星野さんは地域や保護者との連携の必要性を強調します。 広島市西部のある中学では昨年、暴走族が生徒を勧誘するのに悩まされました。バイクなどで校門近くに現れ、目をつけた生徒をしつこく呼び出すのです。 悩んだ末、学校が選んだのは警察との連携でした。「メンバーも卒業生だっただけにつらかったが、在校生を守る選択だった」と校長は振り返ります。関係したメンバーは、無免許運転などでおおむね逮捕され、勧誘は収まりました。 「『面倒見』たち以上の言葉を、子どもたちにかけてこなかった」。複数の生徒が暴走族に入っている市内の中学校長は悔しさをにじませます。悲しいことですが、暴力団を背景にした触手を、学校にも深く侵入させているのが広島の暴走族の実態です。 ある暴走族少年(17)は真顔で言います。「小学校にはちゃんと行っとけばよかった。割り算ができんけえ、割り勘のとき困る」。複雑な家庭環境にあった少年は、小学校を休んでは万引などを繰り返したといいます。「小学校でつまづいた」と明かす少年たちの声はほかにも聞きました。 広島市内の小学校では、警察署の少年補導員らを招いて暴走族への加入防止教室を開く輪が広がっています。早期に暴走の芽を摘み取るためにも、校門を開き、情報や知恵を地域と分かち合うべきだと思います。
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