2002/06/15
二百五十人の大人たちが「特攻服」姿の暴走族少年たちを取り囲む光景に、胸が熱くなりました。広島市中区のアリスガーデンなどで市都心部環境浄化対策協議会の住民たちが「呼びかけ運動」に立ち上がった二月の夜です。 平和都市の真ん中で週末ごとに繰り返される異様な集会に対し、住民がはっきり「ノー」を突き付けました。「そんな服着てあんたらが集まっとると、ほかの人が近寄れん」「早(はよ)う、家に帰りんさい」。少年たちは「だれにも迷惑かけてないじゃん」と反発しながら、たじろぎました。 「小人数で近付くのはさすがに怖かった。数に訴えたんです」。対策協代表幹事の下井良昭さん(54)は苦笑します。ある暴走族グループは「やかましいけえ」と中心部での集会をやめました。地域の目と声が、少年たちを確実に動かしています。 ほかにも、暴走の連鎖から子を救う多くの取り組みを取材しました。廿日市市の「おやじの会」もその一つです。四、五人ずつで深夜、地域を回りコンビニエンスストアの前などにたむろする少年たちへの声掛けを続けています。 昨年の暮れ、何度か同行しました。少年とおやじたちが対話する輪には白い息が溶け合い、笑顔が絶えませんでした。もちろん、空き缶などを散らかしたりすると、しかりつけます。 代表の設計事務所経営野村洋一さん(50)が会の結成を呼び掛けたきっかけは、息子が被害に遭った暴力事件でした。「自分の子を守るため、地域を変えなければ」。野村さんは肝臓がんと闘いながら活動を続けています。 おやじの会を「ウザイ(わずらわしい)」と言う暴走族少年の声もあります。一方で「もし、警察に捕まったら『世話』してと、おっさんらに言うとる」と明かす少年もいます。体を張る「本気」は、地域の子どもたちにも伝わるのでしょう。 「アメリカは個人主義の国と言われますが、そうは思えません」。仕事でニューヨークに駐在している広島市出身の男性から取材班に届いた電子メールです。 男性の住んでいる街では、仕事を理由に地域や学校の活動を怠ると、周囲は不思議な顔をするそうです。「権利、義務を放棄するのか」と。徹底した「地域主義」と言えます。 「治安維持は警察の仕事などと任せきりにする態度は持ってほしくない」。テロ被害の都市から古里へのメッセージです。 広島市街地で「呼びかけ運動」を始めた下井さんは、肉料理店を営んでいます。ただでさえ不景気なのに、BSE(牛海綿状脳症)に絡む風評も重なり、店は苦しい状態が続いています。 にもかかわらず週末の夜、店を空け、街に出ます。「自分の街は自分で守らんと」。その思いを周辺の町内会、商店主で共有し、公共の場での集会を禁止する市暴走族追放条例の実現を後押ししました。 「ダメなものは、ダメ」。おじさん、おばさんの「一言」が、暴力団が支配する暴走の連鎖から子を救うのではないでしょうか。
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